かわらばん

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     地域企業紹介
かわらばん地域版36号 2015年5月

榎本機工株式会社
   ものづくりを極めて、日本で生きていく
 スクリュープレス機の専業メーカー榎本機工株式会社の榎本良夫社長を相模原市緑区町屋の本社工場に訪ねました。隣接している旧工場から移転したのが今年の3月だそうで真新しい工場の2階の大きなフロアーでインタビューに答えてくれました。

 榎本社長の祖父榎本新太郎氏が石川島造船を退職し、1915年(大正4年) に東京九段で榎本鉄工所を創業。創業当時は専ら金属ボタン、バッジ、メダルなどを製造するプレス機を作っていたそうだ。事業拡大に伴い、池袋に移転するが1945年の東京大空襲で工場が全焼し、昭和24年に府中市で事業を再開している。

 徽章や装飾具のメーカーと共に成長してきた同社も戦後は腕時計の業界が一番の顧客となる。セイコーやシチズンが製造する腕時計のケースづくりに同社のプレス機が使われたのだ。日本製の腕時計が爆発的に売れていた東京オリンピックからオイルショックまでは腕時計業界向けが売上の80%を占めていた。1960年、インド政府の要請を受け、シチズン時計とインドの国営企業Hindustan Machine Tool社が腕時計製造のためのハード・ソフトの包括的な契約を結んだことで同社も多数のスクリュープレスをバンガロール近郊の工場に輸出している。現在、同社はインドに多くのプレス機を輸出しているが、その先駆けでもある。

 その後、同社の主力は真鍮鍛造向けのプレス機となり、売上の50%が水道の蛇口やガスコンロなどの住宅関連器具向けに、残りの50%が自動車部品向けという時期もあった。現在は二輪や四輪の自動車部品向けが売上の70%を占めている。そして、自動車工場の海外移転が進み、日本国内での設備投資がほとんど無くなったため、海外の日系企業やローカル企業向けの輸出が売上全体の80%を超えている。ただし、昨年は国内の古い設備の更新時期が来たことや政府の政策も追い風になり国内向けの売上げが50%、輸出が50%だった。輸出先は韓国、中国、タイ、フィリッピン、インドネシア、インド、チェコ、メキシコ、フランスなど世界中に及んでいる。5、6年前はタイの売上げがトップだったが今はインドやインドネシアが伸びている。

 年間12回位ある海外の展示会では 榎本社長が一人で小間の設営から営業までやるし、展示会が終わってから見込客を一軒一軒訪問する。1年の3分の2は海外出張で時差ボケしている暇もないと言う。時には若い社員を同行させ、現場に置き去りにするスパルタ教育もやるらしい。2014 年に展示会で訪れた国は1月のインドを皮切りにメキシコ、タイ、ロシア、ドイツ、ベトナム、ブラジル、台湾、そして12月の中国、インドネシアと十か国に及ぶ。

 世界中に輸出している同社だが 国内生産に強くこだわり、海外に工場を作ることは 考えていない。熱処理などの一部の作業を除き、部品加工、溶接、組み立て、電装、制御プログラムまですべて自社で行い、内製率は90%を超 える。それを支えるのが社内の人材だ。同社は新卒を採用し、日本人しか成しえないような高い感性と鋭い感覚を持つ人材を一から育てている。もの事をとことん考え、五感を研ぎ澄ませて仕事をする職人のような社員を育てようとしているのだろう。そのためモノの「硬さ」や「粗さ」を手のひらや指先で測るコンテスト、「見た目」で重量を当てるコンテスト、ロボットのプログラム技量を競うコンテストなどを定期的に開催する。毎週金曜日にはアメリカ人講師を招いた英会話教室もやっている。

 こうして鍛えられた優れた人材にしか作ることのできない「難しくて面倒な製品」をつくることが榎本機工の強さなのだ。グローバル化が進んだ世界の中で日本企業が生き残る一つのモデルを示しているのではないかと思う。

 人材の確保にも困っていない。毎年のように若くて優秀な人材が青森県からやってくるし、1998年からはインドネシアの研修生も毎年受入れ、現地に帰国した研修生OBは11名を数える。ちなみにその内の3名は当社の顧客でもある神奈川県内にある自動車部品メーカーのインドネシア工場で採用され機械加工や当社のプレス機の据え付けやメンテナンスで活躍している。

 これからの同社の課題は新分野の開拓だろう。これまでも腕時計、住宅機器、自動車部品と新分野を開拓してきたように今後成長が期待できる航空機、医療、電力、更に非金属の加工といった分野にまで挑戦していくと榎本社長は言う。榎本さん率いる職人軍 団のこれからがとても楽しみだ。ガンバレ ニッポン。ガンバレ ENOMOTO。


榎本機工株式会社
代表取締役 榎本 良夫(えのもと よしお)
所在地 :相模原市緑区町屋1-1-5
従業員数:34名 資本金:1,000万円
売上高 :14億円(2014年度)
事業内容 :熱間鍛造用スクリュープレス製造・販売

榎本社長  プレス機の前で