かわらばん

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     地域企業紹介
かわらばん地域版40号 2016年1月

株式会社マーク電子
   攻めの経営 100年企業を目指して
 医療機器や計測器を中心とするEMS事業で成長拡大を続ける株式会社マーク電子の村山忠雄会長を相模原市緑区橋本台の本社工場に訪ねました。村山さんは1942年(昭和17年)に東京蒲田に生まれる。太平洋戦争末期には母親の実家があった下関での疎開生活も経験している。その後、神奈川県立希望ヶ丘高校を卒業し、蒲田にあった日本電子工学院でテレビ技術を学び、20才で相模原市上鶴間にあったポータブルラジオやテープレコーダーを製造・販売していたスタンダード工業に入社する。同社は超小型トランジスタラジオや3インチ超小型テレビを開発するなど先進的な企業として広く知られていた。

 村山さんは入社当初は生産ラインの管理や不良品の修理などを担当していたが、徐々に労働組合活動に関わるようになり、面倒見の良さと爽やかな弁舌が買われ入社5年目25才の若さで労働組合の専従書記長に選ばれている。しかし、同社はオイルショックの影響で経営危機に陥り、アメリカのスーパースコープ社からの出資を受け、その見返りに、人員整理を要求され、当時2500人いた従業員の3分の1を削減することとなった。人員整理反対、そして、割増退職金の確保へと組合の書記長として東奔西走する日々が続いたという。事態が収束した後、村山さん自身も労働組合の委員長、副委員長達とともに同社を退職している。組合幹部として経営の一翼を担ってきたこと、雇用を守れなかったことの責任を取って辞めたということだろう。

 村山さんは早速に就職活動に入るが、ことごとく不採用となる。労働組合の専従書記長経験者を採用するような腹の座った経営者はいなかった。そんなわけで、スタンダード工業の仲間と二人で基板実装の会社を1977年に起業する。相模原市の下溝にあったトランシーバーを製造していた会社の工場と12名の従業員を引き取る形で。創業期は大変で、はんだ付けの装置を購入する資金が無かったので、すき焼き鍋を転用して凌いだし、銀行からの借り入れもままならず親兄弟から支援してもらったそうだ。

 また、電話帳を頼りに相模原市はもとより座間、大和、海老名、厚木の企業を毎日30件以上、飛び込み営業したという。でも、スタンダード工業には決して営業をしなかったそうだ。村山さんの男としての矜持だったのだろう。そして、スタンダード工業の先輩から取引先を紹介してもらうなどして徐々に顧客も増え、4年目くらいから経営も安定していった。この後、業績の拡大に伴い工場を移転し、下九沢を経て現在の地に本社工場を構えるに至っている。

 順調に成長した同社も2008年のリーマンショックでは売上げが30%以上も落ち込み、更に、製造業の海外移転が急速に進む状況下、周囲からは盛んに海外進出を勧められたという。しかし、村山さんはそんな中にあっても、あえて「海外には出ない」「国内で頑張る」と決めたそうだ。そして、日本国内で生産しても見合う付加価値の高い産業分野として医療機器に目を付ける。

 2009年に医療機器の品質保証のための国際標準規格であるISO134 85認証を、更に医療機器製造許可を2010 年に取得し、医療機器製造を会社の中核事業とする体制を整えていった。これを契機に日立アロカメディコ、日本シグマックス、日本光電、富士フィルムなど大手メーカーとの取引が始まり、超音波診断器、AED、十字靭帯機能検査機器などの医療機器やガイガーカウンターなどの放射線測定機器の開発、設計、製造を一貫して請け負うことになる。

 村山さんの座右の銘は「座して死すより、攻めて活路を見い出す兵法あり」だそうだ。常に先手必勝なのである。ISO13485も医療機器製造許可も多くの手間と相当のコストが掛かったはずだ。しかし、その事が医療分野進出を実現させている。一昨年
には今注目の3Dプリンターも導入している。また、産学連携にも熱心で東京大学、聖マリアンナ医科大学、北里大学との共同研究にも取り組んでいる。更に、昨年12月には医療分野の研究開発体制を充実させるため「R&Dイノベーションセンター」をオープンさせた。攻めの経営はまだまだ続きそうだ。

 「攻めの経営の先にこそ10 0年企業はある」と村山さんはいう。日本は世界で最も長寿企業が多い国である。しかし、地球規模で激しい企業間競争が進むグローバル化した現在、それはそんなに生易しいことではないだろう。10 0年企業の仲間入りを目指した村山さん、そして、マーク電子の皆さんの挑戦に期待したい。

株式会社マーク電子
代表取締役会長 村山 忠雄
所在地 :神奈川県相模原市緑区橋本台1-32-1
従業員数:72名 資本金:8,150万円 売上高:13億円
事業内容:医療機器・関連計測機器及びエンジニアリングシステム等
URL:http://www.markd.co.jp/
代表取締役会長 村山 忠雄氏