かわらばん

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     専門家コラム
かわらばん入居版77号 2010年10月

企業をサポートし隊!!
   シリーズ企画 企業支援の現場から…アドバイザー編
 香港・上海で8年間、中国ビジネスの最前線にいたSIC アドバイザーが4 回に渡り、中国事情についてご紹介して参ります。

異文化とのやりとり

●昨今の日中関係と報道
 中国での反日デモの報道があり、日中間が険悪になっていると言われます。実際のところ、以前のSARS 騒ぎも今回のデモも、中国にいると、この騒動はどこの国の事かと思われるほどでした。日本での報道を情報としてどうとらえるかということの大切さを感じます。しかしデモの存在は事実です。

●日本鬼子
 さて、「日本鬼子(リーベングイズ:日本の鬼たち)」という中国語をお聞きになった事があるでしょうか。テレビの中国デモ報道映像などで横断幕に書かれていたりしますので、気付かれた方もいるのではないでしょうか。この言葉は、中国で日本人を軽蔑する言葉として使われる激しい言葉です。中国語のインターネットなどでもよく出てきています。

●日本からの新たなカード
 日本政府の有効な対中外交カードが無い今、この日本鬼子という言葉に日本のオタクといわれる層が反応し、新たな草の根プロジェクトが現在動いています。
 それは、「“日本鬼子(ひのもとおにこ)” という萌えキャラを作り、日本鬼子に別の意味、概念を作る事」で、その新しい概念が定着した人が反日デモや暴動を見た時、「 日本鬼子の旗を持った人が顔を真っ赤にしてシュプレヒコールを挙げていたらどう思うだろうか。」や、「 日本鬼子ってなんだろうってネットで調べたら、萌えキャラのかわいい鬼子ちゃんが出
てきたらどう感じるだろうか。」という趣旨で、この日本鬼子という言葉自体を変質させてしまおうというプロジェクトです。
 日本が誇るアニメ文化やオタクという概念は、かなりの影響力を持ち、中華圏で若者にしっかりと根付いています。情報制限や検閲をする中国政府でも、この様な文化の発信は止めることがなかなか出来ません。

 既に中国のネット掲示板では、
「こっちは罵声を送っていたはずなのに…」
「これが“日本鬼子“って…こんなとき、どんな顔をすればいいか分からない…」
「こう来るとは全く思いもしなかった」
「こんな手を打ってくるとは」
などの反応も返って来ています。

●剛に対して柔で返す
 真正面から対抗してアクションを起こすのも手ではありますが、この様に斜めに受け止めて違う方向から包み込んで相手をやりこめてしまうという方法もあるという例です。
 異文化とコミュニケートしなければならない海外ビジネスでも、違う土俵での交渉に持ち込む、発想を変え相対してみるなど、知っておいて損のない方法のひとつでしょう。

SIC アドバイザー 早野 寿一