かわらばん

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     専門家コラム
かわらばん地域版14号 2011年8月

「勝てる土俵で、勝てる戦い方をしていますか。」
   浜銀総合研究所 取締役・経営コンサルティング部長 寺本明輝(明るく輝く)
 「戦略的に考えて行動しよう」「ウチの会社には戦術ばかりで戦略が無い」など、戦略という言葉は、企業の現場で様々な意味合いで便利に使われています。実際、戦略の定義も学者の数だけあると言われています。それらを大別すると、

①戦略計画…戦略とは組織全体の目標に向かってそのメンバーの活動を整合化させるプラン(シナリオ)である、
②創発…戦略とは現場のミドルたちの相互作用の結果として事後的に生まれるもの、
③ポジショニング…戦略とは特定の「立地」をとること、
④経営資源…戦略とは価値があり、容易に模倣されない経営資源を見定めて獲得すること、
⑤ゲーム…戦略とは競争相手や取引先との駆け引きである、などの意味合いがあげられます。(沼上幹『経営戦略の思考法』日本経済新聞社.2009年10月を参考)

 私は、これらの考え方を参考にしながら、より実践的に展開するために、「戦略とは、目的を達成するために、ターゲット顧客に自社のコアコンピタンスを活用し、競合相手より、より安い、もしくは価値のある商品・サービスを提供するための設計図である」と定義しています。
 
 いわば戦略は他社と違うことを行うこと、あるいは同様の活動を他社とは異なる方法で行うことにより、顧客に価値を提供することであり、そのために、自らの経営行動の力点、優先順位や傾斜配分を決めることです。

 戦略の対極に位置にする言葉は、成り行きです。経済が成熟化した今日、成り行きに身を任せていては企業の存続すら危ういものとなっしまい、その意味からも戦略の重要性はより増しています。

 そこで具体的には、戦略がどのようなもので構成されるのかを考えてみたいと思います。戦略が実現された姿を目に見える形にしたものがビジネスモデルとなります。


ビジネスモデル   =   ビジネスドメイン ×  ビジネスシステム
(価値創出モデル)      (事業の領域) ×   (事業の仕組み)


 ビジネスモデルは、ビジネスドメインとビジネスシステムからなります。
 事業の領域あるいは事業の定義と呼ばれるビジネスドメインを算式で示すと次のようになります。


ビジネスドメイン  =  目的  ×  提供顧客 × 提供機能  × 提供方法  
(事業の領域)    (何のために)  (誰に)  (何を)   (どのように)



 ビジネスドメインはいわば、「戦う土俵」「演ずる舞台」にも例えられます。いくら社員が営業努力しても、いくら優れた技術を保有していても、戦う土俵を間違ってしまったり、身の丈を超えた大きな土俵で戦ってしまったり、していては勝負になりません。

 提供顧客とは、自社の製品・サービスによって満足を享受する顧客であり、提供機能とは、自社の製品・サービスによって顧客は何が満たされるのかを示します。その提供機能をどのように満たすかを示したものが提供方法になります。

 提供顧客、提供機能、提供方法の三つをしっかりと見極め、絞り込み、さらに何のためにという事業の目的との関連で整合性を図ることが戦略の起点となります。

 このビジネスドメインをベースとして、業務プロセスや組織・情報システム、マネジメントシステムに落とし込んだものが、事業の仕組みといえるビジネスシステムになります。

ビジネスシステム  = 業務プロセス × 組織・情報システム × マネジメント
(事業の仕組み)    (どの範囲で) (誰が、どの情報が)(いくらで、いつまでに)

 いわばビジネスドメインはWHATの部分であり、それを現場の実践に結びつけるためのHOWの部分がビジネスシステムに該当します。

 以上のように、ビジネスドメインを起点にビジネスシステムを構築することによって、はじめて戦略を具現化されます。それは、それぞれの算式によって、Why、What、Where、When、Who・Whom、How、How Muchである5W2Hが明らかになっていることからもご理解いただけると思います。

 筋の良い戦略とは、論理的に構成され、かつ社員はじめ利害関係者が腹に落ちるような共感性の高いものでなくてはなりません。

 是非、今一度、自らの戦う土俵やその戦い方について再考してみてはいかがでしょうか。