かわらばん

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     SICの歴史
かわらばん入居版95号 2012年3月

証言で綴るSICの歴史
   有限会社創夢設計 取締役 長崎 克央  ー 第2回(2回連続でご紹介しています) ー
■設計者に選定されてから<早く・うまく>

 提案書が受け入れられ、5月初旬に設計者候補者に選定された通知を受けました。
 さっそく5月中旬より、SICの関係者の皆様の顔合わせが行われ、提言書のコンセプトにズレのないことが確認されました。その後何度か繰り返された建設委員会での打ち合わせでは、出席者の間で激しくも楽しいキャッチボールが繰り返されました。その際に、関係者の目的意識がほぼ統一されており、議論となるのは、目的を実現させる為の手段や手法についてなので、合理的な結論がすぐ見つかります。
 途中で敷地の形状が変わったり、2階建てが3階建てになるなどの外的・内的要因による変更はありましたが「ピンチはチャンス」「変化は追い風」の気分で乗り切り、プロポーザル時点より数段進化・成長した姿で7月下旬に実施設計が完了します。

■コストプランニング<広く・大きく・安く>

 階数の変化について、入居者版かわらばん90号にて前田氏が触れられている事に呼応させますと、実はプロポーザル時の要綱にあった概算工事費と建設条件の想定床面積の割合は「まだ潤沢だ」と感じていました。そこで、設計を進める過程で、階数と床面積を増やし、部屋のバリエーションを増やし、レンタブル比(貸室率)を増やす事となりました。
 その結果として、入居者の数が増え・幅が拡がり、賃料を下げることが可能になり、入居者の負担
が減る事となります。
 ただし、建築のコストは、設計しながら試算しつつ想定するのですが、コストを下げる提案は設計者にとって危険な賭でもあります。

■工事が始まって<質実剛健・品質重視>
 
 コストプランニングで大見得を切ったところで、実際に施工会社に見積を採った際に、枠外となってしまったら今この文章を書く立場にはいられません。実施設計完了後8月初旬に施工業者への図面渡しが行われ、下旬に見積書を提出していただき、無事に目標金額の範囲内で施工業者:古木建設さんと決定し、高品質な施工をしていただき、完成に至ります。

■そして、10年余の月日がたって想うこと

◇エスキスのコンセプトであった「条件の変化に合わせ、常に(箱も中味も)進化・成長していく柔軟なシステム」のようなものが機能していると感じ、絵に描いた餅ではなかった事を幸せに思います。
◇今思えばSIC-1はまだ潤沢な予算でした。先ごろ完成したSIC-3は、さらにレンタブル比を上げ、単位コストを縮減して成立しています。でもこの背景は、単にコストを下げたのではなく、10年の時を経て施設の的を絞る事が可能になったからとも言えるでしょう。
提言書の外観透視図(2階建てに注目)