かわらばん

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かわらばん入居版100号 2012年8月

中嶋社長のつぶやき
   キーワードは「常に考える!」
過日のことですが、ある勉強会で、「良い会社」になるための要件はどんなことなのかを、参加者で対話をする機会がありました。優良企業の事例として、「DOIT!」(*1)DVDを鑑賞しました。

 営業のノルマ無し。残業は一切禁止(残業すると罰金)。定年は70歳。育児休業3年。年間の休暇は有給休暇を除いても140日。しかも全員が正社員。
 この会社は、岐阜県にある未来工業株式会社。名商2部上場。電気設備資材、給排水設備およびガス設備資材の製造販売を行う会社です。業績は、平成24年3月期(連結)・年商28,412百万、当期純利益1,995百万。売上高営業利益率9.4%、自己資本比率77.3%。(*2)素晴らしい業績です。2011年1月に、テレビ東京・カンブリア宮殿(*3)で放送されて以降、テレビや雑誌など、多様な取り上げられ方をされていますので、ご存知の方もたくさんいらっしゃると思います。創業者の山田昭男さんの個性豊かなキャラクターは、インパクト抜群です。

 未来工業の事業と製品は、基本的には住宅関連市場の中の電気設備資材市場。そして、具体的な顧客は、電気設備資材を使用する電気工事業の職人さんです。競合は、パナソニック電工や古川電工などの大企業。ただ単に製品を作り、大手の代理店任せで、販売したのでは、価格競争に巻き込まれ敗北する。そこで、大手代理店に頼らない販売戦略を考え、営業マンは、直接工事現場に入り込む。職人さんの直接的な現場ニーズを聞き込み、職人さんの悩みを解決する製品を開発する。ローテクな商品ではあるが、職人さんが使いやすい「一工夫」を入れた製品を開発し、提供する。結果として、特許庁の意匠登録件数上位20社(平成22年)に、未来工業が20位で登場する。パナソニック、ソニーなど大手企業と同じレベルの件数。これらの工夫から、建築物の電灯スイッチを収める電機設備「スイッチボックス」は国内シェア8割を獲得した。

 創業者で、現相談役の山田昭男さんは、「『戦略』の基本は、差別化である。」「経営者は、『戦術』より、『戦略』に重きを置くべき。」「経営も含め、ものづくりの差別化、販売方法論の差別化、さらには社員を引っ張るリーダーシップまで、すべてを差別化しなければならない。」「普遍的に受け入れられる新製品をつくるには、半歩先の「モノ」をつくる視点と工夫が必要。」「それぞれの部署、全社が努力し、新しい道を作っていく必要がある。」「ライバルがやっていないネタを付け加える工夫を常に考え、実行する。」「差別化を図るには、常に考える習慣をつけること。新製品や仕事の効率化について考え続けることが大事。」「差別化すれば、中小企業だって大企業に勝てる」

 中小企業が、市場の中で勝ち残り、成長するための一つの戦略として、「差別化」がある。扱っている商品は「とびぬけて先端的なもの」でなくても、「常に考える」ことで、工夫を続け、顧客にとって、使いやすい、便利な製品を提供する。
 そして、もう一つ大切なこと。「常に考える!」は、「考えろ」という命令・指示ではなく、「考えよう」という提案・呼びかけでもない。誰かに言われたからではなく、自らの意志で、自発的に考えること。まさに、自立した社員の育成が肝。「差別化」を作るのは、社員である。そして、この「常に考える!」社員が、まさに企業の全体戦略の中での「差別化」でもある。・・・

(注)
1.「DOIT!」は、働く喜びや意欲を高めるCS・ESが学べるビデオ・DVDです。
株式会社ブロックス http://www.doit-fun.jp/
2. 未来工業株式会社 http://www.mirai.co.jp/
3. テレビ東京「カンブリア宮殿」村上龍 2011/1/20・バックナンバーがあります。
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/20110120.html
4. 参考文献
(ア)「日本でいちばん社員のやる気がある会社 」 山田 昭男 中経の文庫 2010/2
(イ)「ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる」山田 昭男 東洋経済新報社 2012/8