かわらばん

かわらばん

    
かわらばん地域版24号 2013年4月

SICの歴史
   株式会社さがみはら産業創造センター 専務取締役 山本 満
 SICも皆様に支えられ14歳となりました。そこで、今号から6回にわたりSIC の誕生に関わった人達に創立当時を振返っていただきます。
 第1回は「産学共同研究開発支援施設に関する検討会」の思い出です。相模原市は地域産業の活性化のため大学・研究機関と企業を結ぶ拠点整備を計画していました。行政が考えたこの計画を産業界の視点で再検討したのがこの検討会です。この検討会での議論がSIC誕生につながっていくことになります。
 検討会のメンバーは11名。市内の若手経営者と相模原市や商工会議所の若手スタッフで構成されました。その当時の名簿を見ると30代が7名、40代が4名です。SIC の取締役を長年務めていただいた権田さん、小俣さん、そして、現在もSICの取締役として活躍していただいている松岡さんもメンバーの一員でした。私も相模原市の若手職員として参加しました。また、事務方として検討会を支えてくれたのがSICの企画事業部副部長の稲垣さんとSICのスタッフを経て自ら起業した小俣さんです。こうしてみると検討会はSICの母体となった組織といえます。
 1998年4月28日に第1回の会合が相模原市立産業会館の4階にある国際商談室の一角で開かれました。メンバーも働き盛りで忙しかったため11時30分集合、弁当を食べながら議論を始め13時30分解散といったタイトな会合でした。思い出深いのが施設建設を巡る議論でした。施設建設に非常に懐疑的で「施設整備ではなくソフト支援を重視すべきだ」、「既存施設の改修で対応すべきだ」と主張するメンバーもいましたから議論は白熱しました。私は進行役でしたが、施設整備は断念せざるを得ないと考えたほどです。
 また、運営についても公的機関ではなく株式会社でやるべきだとの意見が強く出されました。
 学識経験者を招いた意見交換や東海大学、慶応大学の訪問も含め合計11回開催され、同年の12月に相模原市長に提言書を提出しました。

 提言のポイントは2つです。

1.民間主導の運営
 産業振興にはスピードや柔軟性が非常に重要であり自治体や財団ではなく新たに会社を作って経営すべきである。

2.低廉な施設づくり
 賃料を低く抑えるためにも無駄を省いたローコストな施設とすべきである。
 SICは全国的にも成功したビジネスインキュベータという評価を受けていますがこの検討会の提言が成功に導いた大きな要因となっていると思います。

 こうした幸せなスタートを切ったSIC。ここで示された提言を忘れることなく、地域社会や企業が求めるニーズを常に追いかけ、変革し続ける産業支援機関であらねばと肝に銘じています。

【提言骨子】

○施設整備のねらい
 相模原市や周辺地域の持つ産業や研究機関の集積を活かし、新しい産業の創造、最先端技術の研究開発、基盤的な技術・技能の継承などを地域全体で推進する拠点づくりを進める。
 また、そうした技術や情報を世界に向けて発信する。

○ 機 能
・新規創業の立ち上げ期支援、産学連携の仲介、技術相談を行う。
・新規創業や共同研究を支援するため低廉なスペースを提供する。
・地域企業の経営層の意識啓発や技術者の育成を行う。

○ 運 営
・民間の活力、人材、企業経営のノウハウが反映できる組織が運営すること。
・地域企業が参画できる組織とすること。特に次世代を担う産業人の参加が望まれる。
・したがって、地域企業と行政による共同会社を設立し、事業実施を行うことが必要である。特に採算性を重視すること。

○ 施 設
・当初は必要最小限の建物とし、必要に応じ順次整備すること。
・機能を重視し、無駄を省いた低廉な施設とすること。
・貸しスペースの設備については電気、ガス、通信など基本的な機能のみとし、それ以外の設備については後日入居者が設置すること。


【検討会のメンバー(当時の所属)】

権田 源太郎:権田金属工業(株)
小俣 邦正 :(株)昭和真空
松岡 康彦 :湘南デザイン(株)
河本  悟 :東邦電子(株)
小林 孝至 :クニミ工業(株)
尾崎 一朗 :尾崎ギアー工業(株)
布施 昭愛 :相模原商工会議所
林 晃   :相模原市産業振興財団
山本 満/小俣 晃之/稲垣 英孝:相模原市
SIC-1 の模型