かわらばん

かわらばん

    
かわらばん地域版88号 2024年1月

相模ガス株式会社
   人生の指針 それは「Promise」
 LPガスを販売する相模ガス株式会社の代表取締役である杉岡芳樹社長を相模原市中央区淵野辺の本社に訪ねました。

 今年で創業65年となる同社は、昭和34年9月に杉岡芳樹社長の父である杉岡敏毅さんが「淵野辺プロパン商会」を立ち上げたのが始まり。昭和40年、思いがけない事故で亡くなった敏毅さんに代わり、母の増子さんが会社を引き継ぎました。杉岡社長が中学3年生の時、増子さんは事業を営みながら必死で我が子3人を育てられたとのこと。その後、平成6年に杉岡芳樹社長が代表取締役に就任し、今年で就任30年目の年となります。現在、LPガスの販売をはじめ、東京ガス仕様配管工事を含むガス配管工事一式、ガス器具および厨房器具の販売・取付工事を主要事業とし、営業網は神奈川県の西部、横須賀・湘南エリア、埼玉県や山梨県の一部を含む広範囲なエリアに1万軒以上の顧客を有しています。

 創業以来、エネルギー供給の専門会社として「地域密着」「顧客第一主義」を掲げ、地域に寄り添いながら営業活動を続けています。そんな同社を率いる杉岡社長は、平成27年に亡くなった先代社長であり母である増子さんからの、「Promise」という言葉を常に念頭に置いて生きるように教わりました。「常に他人に対して、また自分自身に対して約束を守ることを第一に考えよ。自分の成長と信頼関係の構築のために誠実に生きることを目指せ」という教えで、今でも杉岡社長の心に深く刻まれており、“生きる上での指針”になっています。事業においても、LPガスの販売を通じてお客様に安全・安心、快適な生活を“約束”することがライフライン事業者として最大の使命となっています。そして、その責務を果たすために365日24時間体制の窓口を設置し、マイクロコンピュータを駆使した遠隔システムの導入などにも躊躇なく投資を行い、より良い提案に向けた事業のリノベーションに取り組んできました。

 一方で、「LPガス業界の今後については、いくつかの要因が影響を与える可能性がある」と杉岡社長。1つ目は、環境規制の強化:環境に配慮したエネルギー政策の推進により、LPガスが減少する可能性があります。そのため、販売会社は、より環境に配慮したエネルギー源へのシフトを進める必要があります。たとえば、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーへの事業展開などが考えられます。2つ目は、コスト低減の必要性:LPガスは市場競争が激しいため、価格競争力を維持する必要があります。そのため、効率的な物流・配送システムの確立や生産ラインの自動化・省力化など、コスト削減に取り組むことが重要です。3つ目は、需要の多様化:住宅用途以外に商業や産業用途でもLPガスを使用することがあります。販売会社は、需要の多様化に対応するため、新しい市場を開拓することが必要です。たとえば、LPガスを使用する商業施設や産業施設向けのサービスの検討をすることが考えられます。4つ目は、技術革新の活用:LPガスの使用方法や設備に関する技術革新が進んでいます。販売会社は、これらの技術を積極的に取り入れ、高品質なサービスを提供することが必要です。たとえば、IoT技術を活用した設備監視・管理システムの導入や高効率なエネルギー機器の提供などが考えられます。今後、こうした課題に取り組んでいくことが非常に重要だと捉えています。

 そんな杉岡社長は、相模原生まれの相模原育ちで、これまでの人生のほとんどを淵野辺で過ごしてきたそうです。上智大学3年の時には、友人から紹介された小田実著「何でも見てやろう」という本と出会います。内容は著者が留学生として「まあなんとかなるやろ」の精神でカナダ・メキシコなどを訪れる体験記でした。もともと欧米の映画が好きで、留学したり、将来は映画製作の仕事に関わりたいと思っていたところ、「世界を見てやろう」とする著者の貪欲な姿勢に「今の自分に足りないのはこれだ!小田に負けてられるか!」と闘争心が湧いたのだとか。就職を目前にしてうつうつとする中、「長男は仕事を継ぐべき」という母の増子さんを説得し、大学4年の5月から格安ルートで欧州16か国を放浪する旅へ。横浜港からナホトカ、モスクワ、フランス、イタリア、ドイツなどを巡りました。そして、イスタンブールのボスポラス海峡(東洋と西洋の境)の橋の上で「そのまま放浪して中近東から東南アジア経由で旅を続けるか、それとも戻って家業を継ぐか?」、悩みに悩んだ末、自分は戻って家業を継ぐことを決心しました。昭和47年、ぼんやりと描いていた映画への思いを断ち切り同社へ入社。3か月にわたる放浪の旅は、様々な体験から自身の進むべき道が明確になった瞬間として、今でも忘れられない青春時代の思い出になっているそうです。

 現在、杉岡社長は自社の経営を行いながら、約4500社の会員数を有する相模原商工会議所の会頭をはじめ、相模原市産業振興財団理事長を務めています。平成17年から24年にかけては㈱さがみはら産業創造センター取締役を歴任し、地域の産業振興に力を注ぎ、そうした功績から、令和3年春には「旭日小綬章」を受賞されました。昭和・平成・令和と激動する時代の中で、様々な苦難を乗り越え、長きにわたり事業を継続してきた相模ガス株式会社。新たな年を迎え、時代は変わっても「Promise」「地域密着」「顧客第一主義」の精神は永遠に受け継がれていくことでしょう。

代表取締役: 杉岡 芳樹(すぎおか よしき)
所 在 地: 神奈川県相模原市中央区淵野辺3-1-2
従業員数:  25 名
事業内容:  LPガス販売、ガス配管工事、東京ガス仕様配管工事、
       ガス器具及び厨房器具販売
URL: https://www.sagamigas.com/
杉岡社長