南西フォーラム開催情報 / 開催報告

会員企業のIoT関連活動の紹介(その1)
「IoT×モノづくり」でスポーツ施設と
利用者の満足度アップを追求する株式会社シェーン

○ シェーンの取組みの概要
 株式会社シェーン(神奈川県相模原市中央区)は、IoT技術関連製品の開発、設計、製造、販売を行うベンチャー企業です。他社と大きく異なるのは、IoTをデータ収集ツールとしてフル活用するだけでなく、モノづくりでも工夫を重ねていることです。イノベーションは異なる要素のかけ合わせで生まれますが、まさにそれを実行しているのです。その取組みは、価値創出をめざす企業にとって、お手本となるものの一つです。
 
それでは、同社の取組みをご紹介しましょう。


(1) 顧客との継続的な関係構築を目的に導入したIoT
 シェーンは、キャッシュレス化を実現する課金装置の付いた機器の製造販売を主業としています。主にスポーツ施設向けに、500を超える水素水サーバーやプロテインサーバーをのべ15万人の登録者に提供しています(2019年11月時点)。

 このビジネスを行う中で、「顧客に機器を売って終わり」ではない継続的な関係を構築する手段としてIoTに着目したのだそうです。機器を管理運営する力を磨くことで、スポーツ施設とその利用者に新しい価値を提供できると考えたのです。このため、提供する機器のIoT化を実現し、データを収集すると同時に機器の制御を行っています。

(2) 顧客要望に対応できる課金装置が価値を増大
 シェーンの技術的コアの一つは課金装置です。硬貨課金、磁気課金、IC課金などの課金装置を開発すると同時に、そのIoT化によって、利用者の購入動向、例えば飲料などが購入された曜日や時間帯などがリアルタイムで把握・分析できるようにしています。また、売上集計も自動化し、予測メンテナンスも実行しています。

 ここまではIoT化による一般的なメリットです。同社はさらにこれを超える価値を提供しています。それは、IoTクラウドサービスの“Schon Wolke”(シェーン・ヴォルケ:ドイツ語で「美しい雲=クラウド」を意味する)を利用して、顧客であるスポーツ施設の要望に応じて課金設定の柔軟な変更を可能にしたことです。

 同社の課金装置は、定額で飲み放題にしたり、プロモーションのための無料キャンペーンに対応したり、顧客のクラスごとに料金を変える、などの設定が自在にできます。しかも、この設定はネットワーク経由で簡単に行うことが可能です。データに基づくマーケティング戦略の展開が容易なのです。これを実行することで、スポーツ施設は顧客満足度を高めると同時に、自販機の売上げ増加を実現できるのです。

(3) モノづくりに対するこだわりが結実したプロテインサーバー
 同社のビジネスが飛躍するきっかけとなったのは、プロテインサーバーの提供です。タンパク質(プロテイン)の摂取は、筋肉づくりや減量などに有効ですが、自販機でプロテインを販売するには問題がありました。プロテインの原料であるプロテインパウダーを、自販機では完全に溶かすことが難しかったのです。

 このため同社では、課金装置だけでなくプロテインパウダーを完全に溶かすことが可能な自販機の開発に挑戦し、これに成功したのです。まさにIoTに加え、モノづくりによって価値を創出したのです。現在、プロテインサーバーでは、筋肉づくり、減量、健康維持、素早い回復を目的とした4種類のプロテインを提供しています。もちろん、IoTを活用したデータ収集も実施しています。ハード的なモノづくりとIoTを中心とするシステム化を組み合わせるという柔軟性が、ビジネス発展に大きくプラスに作用するというお手本のような事例です。

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 同社から寄せられたIoT関連の取組みの詳細は以下のとおりです。



■企業情報
会社名 株式会社シェーン
住所 (〒252-0206)
神奈川県相模原市中央区淵野辺4-20-14 清水ビル3F
電話番号 042-704-8856
本件担当者氏名 業務課 小林 慎太郎
メールアドレス s-kobayashi@schon-sys.co.jp


1.IoTクラウドサービス「シェーン・ヴォルケ」の概要
(1) 主な用途
自販機キャッシュレス化システム:主にスポーツクラブ向けの水素水サーバーやプロテインサーバーのキャッシュレス運用を実現するシステムソリューション

(2) サービスの概要
課金装置で読み取ったICカードの情報を瞬時(約2秒)にクラウドサーバに照会し、利用可否判断や利用回数の制御を行う。同時に、利用頻度や機械本体の死活監視情報もクラウドサーバに逐次上がる仕組みとなっている。

(3) 概要図
【システム構成図】
スポーツ施設の厳しいセキュリティポリシーに対応するシステムとして、各店舗の各飲料サーバーの情報を安全かつ高い信頼性で、情報収集/管理/制御を行うことができる。

事業イメージ
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(4) 取り扱うデータの概要とその活用法
・ICカード情報(イベント情報、時間、カード属性、商品情報、入退会情報、等)
・機械情報(設定情報、エラー情報、稼働情報、等)

2. 事業化への道のり
(1) 導入に当たり苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間
スポーツ施設に既に導入されていた会費決済システムとの連携、さらに、施設毎にバラバラだった情報システムとのコネクション確保に苦労した。また、技術者目線でなく運用者側、使う側の目線で使い易いシステムの作り込みも大変だった。M2Mルーターの内製化を行ったが、開発にあたっては1000ページ超の英語マニュアルを読解することが必要でこれに予想外の時間をとられた。

(2) 技術開発を行った事項
・3G回線を搭載したM2Mモジュールのオンボード化
・特許技術「自動サービス提供装置」・・・トラブル時の機会損失等を自動的に補填するシステム
・特許技術「飲料課金システム(従量制)」・・・自販機における従量制を実現する課金システム

3. 今後の展開
(1) 現在抱えている課題、将来的に想定する課題
膨大なデータを的確に整理・分析し、顧客が必要と想定する情報を的確かつ迅速に伝えるなど、システム運用にあたってのユーザビリティ向上が今後の課題の一つ。また、IoTシステムに詳しくない顧客にその全体像やメリットをどのように伝えていくかも課題。

(2) 強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動
スポーツ施設の中には、さまざまな機器がある。これらの機器を「シェーン・ヴォルケ」に収容することで、スポーツ施設内におけるソリューションの幅を広げ施設およびその利用者の満足度を上げることを目指す。

また、現在、スポーツ施設の24時間営業に伴う無人化・省人化が拡大しているが、この中でレンタルタオルの無断利用や盗難が問題となっている。この問題の解決のため、IC制御による扉付きタオルロッカーを開発した。これを「シェーン・ヴォルケ」に収容し、レンタルタオルの管理を実施できるようにする予定。また、日焼けマシンのIoT化も手掛ける予定。

さらには、プロテインサーバーは給食サービスやヘルスケアなどスポーツ施設以外でも需要があると考えており、商品の異業種への横展開を進めたい。

(3) 将来的に展開を(他企業との連携を含め)検討したい分野、業種
・キャッシュレス化を図りたい機械メーカー(飲料サーバー、フィットネスマシンなど)
・スポーツクラブ向けに自販機化あるいは物販展開を図りたい業種(レンタル用品、サプリメーカーなど)

4. さがみはらIoT研究会に期待すること
参加企業のビジネスに繋がり、結果的にIoTの裾野が広がるような企画や活動に期待している。また、相模原市の行政課題をIoT活用で解決する企画や活動にも期待している。
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