南西フォーラム開催情報 / 開催報告

会員企業のIoT関連活動の紹介(その2)
IoT活用で競争力向上をめざす
-流量計・継手・熱交換器・環境改善製品の
 トータルメーカー株式会社リガルジョイント-

1.同社の概要
 株式会社リガルジョイント(神奈川県相模原市南区)は、流量計・継手・熱交換器・環境改善製品のトータルメーカーをうたうファブレス企業です。製造する製品の多くが、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に関連しているのが特長です。

環境対応を意識した本社社屋は、蓄熱式の冷暖房システム、微細噴霧冷却システムなどを装備しています。さまざまなSDGs関連活動に積極的に取り組んでいる努力が認められ、2019年2月には「かながわ地球環境賞」を受賞しています。


2.IoT活用に関する取り組みの概要
 同社が抱えているのは、製品の競争力強化という課題です。この解決に向け、IoTを活用した生産性向上や機器の性能向上、予防保全などに取り組んでいます。

 製造業のIoT活用の典型例の一つは、製造プロセスの可視化です。設備の稼働監視、部品在庫や製品在庫の見える化、製品の品質管理などです。ところが、リガルジョイントにおけるIoT活用のパターンは、これとは違います。同社は、流量計の検査からIoT活用をスタートして、顧客との協働で冷却システムの遠隔監視にも挑戦しているのです。

 同社はファブレス企業です。その製品の大部分は、約350社ある協力企業が製造しており、同社の主な役割は、製品/システムの企画設計・開発、製造委託、製品の受入・販売です。しかも、B to Bビジネスが基本であり、顧客企業のニーズに応じて製品を提供する、あるいはシステムを構築・提供することが求められています。このため、製品の品質管理や運用保守の最適化が課題となっているのです。


3.今後の発展に向けた考察
 リガルジョイントのビジネス領域を考えると、企画設計・開発など「創る」ことの迅速化・最適化、それに加え運用・管理や保守など「使う」ことの最適化がIoT活用の大きな目的となりそうです。

 「使う」ことを最適化する場合、データを収集する場所は、製品/システムが使われる顧客サイドの現場となります。同社の流量計・継手・熱交換器などの製品は、液晶パネル製造装置、樹脂成型機の金型、高周波誘導加熱炉などさまざまな設備の冷却に使われています。顧客である半導体や化成品の製造、金属加工などの工場では、利用シーンに合わせた冷却を効果的、効率的に行い、かつ、冷却システムの運用を最適化し、異常や故障を防止し、事前保守の実施などでダウンタイムを最小化することが求められます。

 一方、製品/システムは顧客ごとにカスタマイズされています。このような状況下でのデータ活用法としては、製品/システムの稼働データのシミュレーション予測からの乖離(かいり)、配管やその接続部の劣化状況の予測からの乖離など、収集したデータを見ながらエンジニアが課題を考え、その気付きを製品/システムの企画設計・開発や運用・保守などにフィードバックすることが考えられます。

 また、顧客の要望に対応できる製品/システムを素早く企画・設計し、精度の良いシミュレーション結果を顧客に提案し、理解してもらうことも信頼を得るために重要でしょう。この実現に向けて、顧客との密接な協力で製品/システムの稼働データを収集することはもちろんですが、データを見て課題を発見・解決できる知的なエンジニアを育成することも求められます。

 同社の環境改善製品の主力であるオゾン製品に関しては、脱臭、除菌したい空間を持つ食品工場、飲食店、老人ホーム、養鶏・養豚場、排水処理が必要な染色工場などが顧客です。このビジネスも、顧客の課題を解決する製品/システムを素早く提案し、かつ、利用の最適化をサポートするという点では、流量計・継手・熱交換器などと似た側面があります。利用現場からデータを収集し、オゾン製品/システムの最適利用を実現すること、顧客要望に対応できる製品/システムを素早く提案すること、などが価値となり、これを同社の競争力強化につなげることができそうです。


4.価値創出に必要なリーダーシップと対話
 リガルジョイントのIoT/データ活用はまさにチャレンジです。従来の同社のビジネスの枠組みであった良い製品を開発するというモノづくりの基本的な考え方を少し拡げ、収集したデータを読み、そこから価値を創出することが重要になります。現場に飛び込み、現場の声を徹底的に聞いて対策を講ずるだけでなく、顧客が気付いていない課題をデータから見つけ、それを製品/システムの運用や企画・設計、開発に反映していくのです。さらには、企画設計段階でのシミュレーションを高度化し、顧客の要望に対応することも重要です。

 このような社員の意識改革を伴う変革を成功させるには、社長のリーダーシップ、社員を啓発し、顧客理解を進めるための対話が不可欠です。リガルジョイントがIoT/データ活用を契機に知識集積型企業に脱皮し、飛躍することを期待したいと思います。


株式会社リガルジョイント本社ビルと

写真:株式会社リガルジョイント本社ビルと
   稲場純 代表取締役




流量計の検査環境のIoT化など同社のIoT活用に関する取組み

1.IoT導入のきっかけ、背景
 リガルジョイントの流量計や配管継手は、半導体製造装置や液晶製造装置などで使われている。これらの装置では、装置の停止や故障につながるオーバーヒートを防ぐため、冷却が必要である。当社は、この冷却システムを提供しており、流量計や配管継手はシステムの重要な構成要素となっている。

 従来、当社はこの流量計の検査を目視で行い、検査結果を手書きで記入し、これを別途パソコンに入力し品質管理を行っていた。しかし現状のプロセスでは人手が不可欠であり、また、作業工数やコストを削減するのが困難であった。そこでこの問題を解決するため、IoTを導入し、目視による確認作業や数値入力の効率化を実現した。


2.IoT活用事例の概要
(1) 活用事例の名称
 流量計の検査環境のIoT化

(2) 活用事例の概要
 計測値が正しいかどうかを検査する流量計のデータと、検査の際にマスターとなる校正済で正しい値を示すコリオリ流量計のデータを流量管理システムに送付し、さらにゲートウェイ経由でクラウド上にあるIoTプラットフォーム「SensorCorpus」に送付し、クラウド上で検査データを一元管理する。

現在の検査では、水の流量調整は作業員の主導で行っているが、将来的にはクラウド上のデータ解析で流量の自動調整を可能とする予定である。


(3) 概要図
【IoT導入前と導入後の検査プロセス】

事業イメージ


(4) 取り扱うデータの概要とその活用法
・検査する流量計とコリオリ流量計のデータを用い、流量計の精度を検査
・一元化された流量計の計測データを分析・解析し、歩留まり状況の把握による品質管理の一元化

3.導入への道のり
(1) 導入に当たり苦労した点
 導入後、検査する流量計の調整(キャリブレーション)に時間を使っていることが判明し、この効率化に苦労している。

(2) 導入に当たっての協力メーカー
・IoTプラットフォーム⇒株式会社インフォコーパスの「SensorCorpus」を活用
・ゲートウェイ開発⇒相模原市の組み込み・IoTメーカーの株式会社MEMOテクノスの技術を活用

4.今後の展開
(1) 現在抱えている課題、将来的に想定する課題
 現在、流量計の検査環境のIoT化に加え、金属加工工場でクーラント液(冷却液)の状態を遠隔監視し、最適なクーラントを維持するためクーラントの回収・供給の自動化を実施している。また、収集したデータからクーラントシステムの予防保全に挑戦している。

 将来的には、流量計の検査環境のIoT化だけでなく、当社の製品全般においてIoT活用を進めたい。例えば、冷却システムにおいては、流量計のデータだけでなく、冷却液の温度データ(開発済)、漏れデータ(開発中)を計測し、冷却システムにおける冷却液の流れをシステマティックに把握し、新たな価値創出につなげていきたい。


(2) 強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動
 新たな価値創出に成功するには、会社全体でIoTなど新しい技術とその使い方に対するリテラシーを高めていくことが不可欠であり、思った以上に時間がかかると感じている。これを加速するため、IoTを使うと仕事が楽になると実感してもらうことが重要。


(3) 将来的に展開を(他企業との連携を含め)検討したい分野、業種
・当社のビジネス領域である冷却システム、環境製品、熱交換器の分野で、業界を問わずパートナーとなる企業を増やしたい。
・優れた技術を持っている企業の製品を扱えるようにしたい。


5.さがみはらIoT研究会に期待すること
・IoT活用の成功事例をどんどん作ってもらい、その情報を会員で共有できるようにしてもらいたい。
・都内と相模原市では情報格差がある。都内ではIoT活用のレベルが一段階上であり、既にIoTを活用したソリューション提供の段階に達している企業が多い。この差を埋めるために、SDGs推進などの旗を掲げ、さまざまな施策を推進してほしい。


■ 会社情報
会社名 株式会社リガルジョイント
住所 (〒252-0331)
神奈川県相模原市南区大野台1-9-49
電話番号 042-756-7567
本件担当者氏名 武田 貴城
メールアドレス eigyou@rgl.co.jp