かわらばん

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     研究室紹介
かわらばん入居版56号 2009年1月

職業能力開発総合大学校 Polytechnic University
   電子システム工学科 鳥居研究室 教授 鳥居 康弘 氏
 本校はものづくりをモットーにしており、当研究室でも、サブ波長構造の石英やクロムを製作できるナノ微細加工技術と電子技術、コンピュータ技術を基盤にして、新しいホログラフィック光学素子や回折光学素子を実際に作製し、性能を実証しております。以下、研究内容を御紹介させて頂きます。

(1)コンピュータで設計するホログラフィックな画像記録・波面制御光学素子の開発
 ホログラフィは3次元像の記録法として良く知られておりますが、(1)レンズ系なしで像を再生でき、(2)偽造が難しく守秘性に優れ、(3)仮想パターン(波面)を生成できるなどの特徴があります。これらの特徴を生かすためには、ホログラム再生像の高品質化が重要と考えまして、目的とする画像やパターンにできるだけ近い再生像を得るために、どのようにホログラムを符号化するのが良いかを明らかにしました。同時に、ホログラムをできるだけ微小で高精度に作製出来るようにして、長年の夢であった斑点模様(スペックル)のない高品質なホログラム再生像を実現できました。開発したホログラムコーディング手法は汎用性があり、ホログラフィック光学素子の設計に有効な手段である
と考えています。

(2)サブ波長構造特有の特性を生かした新規な微小光学素子の開発
 等方的な屈折率をもつ石英でも、波長以下の微細構造(サブ波長構造)にすると、複屈折性を持たせたり、屈折率を制御したりすることができます。そこで、バイナリ構造やマルチレベル構造でサブ波長構造の石英光学素子を作製する技術を確立して、1/4波長板、偏光ビームスプリッタ、マルチレベルホログラム等を作製して、その性能を実証してきました。光学部品は今後短波長化、微小化の流れに対応する必要がありますので、サブ波長構造の偏光ビームスプリッタ、ホログラフィック素子はこれらの流れに適応した光学素子であると考えられます。

(3)マイクロ液晶パネルのホログラム表示によるレンズなしでの画像再生
 画素が小さく画素数の多いマイクロ液晶パネルの性能が向上すれば、マイクロ液晶パネルは実時間ホログラムの画像再生機器として有望と思われます。そこで、HDTV対応の市販のマイクロ液晶パネルを用いて、再生像の高品質化や動画像再生の研究を進めております。バイナリ表示でも、斑点模様のない良好な再生像を得られるようになりました。この構成は、像を結ばせるレンズを必要としませんので、携帯用プロジェクタ等の小型画像表示機器に有効と考えられます。

(4)組み立て・調整が容易なnm分解能のリニアエンコーダの開発
 短周期の回折格子を用いれば、組み立てや調整が容易で高精度なリニアエンコーダを実現できるので、小型のリニアエンコーダを設計・製作して、nmオーダの分解能を確認しました。現在は、検出信号を変位信号に変換する回路、処理法についての研究を進めています。

 もし、私どもの研究に興味をお持ちになり、お役に立てるチャンスがあれば、お気軽に連絡を下さい。
 なお、これらの研究に関する紹介を、平成21年1月28日(水)の公開講座(JR田町駅創業サポートセンター時間:18:15-19:45)で行う予定になっております。

職業能力開発総合大学校ホームページ http://www.uitech.ehdo.go.jp

サブ波長構造編光素子