かわらばん地域版14号 2011年8月
エヌ・デイ・ケーエンジニアリング株式会社
 自分達の技術で何が出来るのか、新事業に挑む
エヌ・デイ・ケーエンジニアリング株式会社の柳沼良和社長を平成20年8月に相模原市緑区根小屋に新設した本社工場に訪ねました。同社は日本電子工業株式会社のイオン窒化などのプラズマ装置と高周波誘導加熱装置の製造とメンテナンスを請負う子会社。
日本電子工業が新時代の熱処理方法としてイオン窒化法に着目し、独自の研究開発を行い、日本で初めてイオン窒化装置の製造を開始したのが昭和48年。柳沼社長は、イオン窒化装置の初めての営業マンとして入社している。自動車部品メーカーから小さな金型工場まで、全国を回り、飛び込み営業も数えきれないほどしたそうだ。日本メーカーだけで8社がひしめく厳しい営業の現場だったがプラズマを安定させる電極と制御回路に強みを持つ同社は大手メーカーと互角の競争をした。装置が大物なだけに、成約の金額も大きく、とてもやりがいを感じたという。自分1人で年間2億数千万円を売ったことも。平成2年頃からは台湾、タイそしてインドネシアへ2ヶ月に1度は出かけていった。取引先はもっぱら日本企業の海外工場だったが台湾ではローカル企業にも販売していた。台湾は当時から非常に活気のある国だったそうだ。そして、海外の顧客を日本に招いての営業では富士山登頂が定番で五合目には数え切れないほど登ったそうだ。
平成11年に日本電子工業装置営業部の次長からエヌ・デイ・ケーエンジニアリングのメンテナンス部長へ移籍。営業で全国を飛び回っていた日常が一変する。
事務所にいる時間が長く、まるで牢屋に入れられた様な感じだったそうだ。そして、平成13年に日本電子工業から装置製造部門が移管されたのを機に製造管理部長になり、装置製造部門とメンテナンス部門を統括する同社のナンバー2として重責を担うことになる。
まったく経験のない仕事だったが貯蔵品の整理、図面の統一、書類の電子化、コンピュータシステムの構築、部品の内製化とがむしゃらにやってきた。この時期に「経営を学びたい」とSIC経営塾の門を叩いている。そして、平成21年、代表取締役社長に就任。今、白馬大雪渓での渓流釣りにはまっている。煩わしいことの多い日常をすっかり忘れることができるそうだ。
リーマンショックから立ち直りを見せていた業績も東日本大震災の影響もあり伸び悩んでいる。また、製造業の海外移転も進む中、親会社からの製造請負だけに依存していては成長できない。自分達が持つ技術や経験を活かして自社ブランドの装置を作り出そうと考えている。今、取り組んでいるのが未利用バイオマス資源を使った高機能材料の開発。例えば、木炭などにフェノール樹脂を含ませて焼成したウッドセラミックスはまったく新しい多孔質炭素材料で、導電性、摺動性、耐熱性、耐食性に優れ電磁シールド材や燃料電池た部材としての用途が期待される。
長年培ってきた高度な熱処理と制御技術をもってすれば、実現の可能性は高いと柳沼社長は静かに語る。エヌ・デイ・ケーエンジニアリングの将来を託す技術がここ根小屋の地から生まれようとしている。
エヌ・デイ・ケーエンジニアリング株式会社
代表取締役社長 柳沼 良和
所在地:相模原市緑区根小屋1733番7
従業員数:16名 資本金:1000万円
売上高:2億7千万円(2010年度)
事業内容:プラズマ装置(イオン窒化、プラズマ浸炭、プラズマCVD)、
高周波誘導加熱装置の製造およびメンテナンス業務