かわらばん

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     地域企業紹介
かわらばん地域版33号 2014年11月

田中水力株式会社
   ミニ水力発電を通して社会に貢献する
 ミニ水力発電プラントのトップメーカー「田中水力株式会社」の田中幸太社長を相模原市南橋本の本社工場に訪ねました。
 同社のルーツは1932年(昭和7年)に田中社長の曽祖父にあたる田中茂氏が発電用水車の製造・改造・修理の専門会社として創設した田中水力機械製作所。都内での操業を経て、1992年に座間市に移転。2005年に水力部門が分離独立し、田中水力株式会社となる。座間の社屋が手狭になったため2014年5月に相模原市緑区南橋本に移転。

 専ら発電用水車の保守点検を手掛けていた同社の転機は2002年の「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」通称RPS法の施行。この法律は電気事業者に対して、新エネルギーによる発電を一定量以上義務付けるもので、東京電力などの電力会社は風力、太陽光、小水力などの再生可能エネルギーによる発電が義務付けられた。そうした中、東京電力の子会社東京発電株式会社から「浄水場やポンプ場などの既設配管途中に水車を設置して発電できないか」と相談があり、そこから東京発電、東京電力との共同開発が始まり今では同社の代名詞ともなっている「リンクレス・ハイドロパワー」と名付けたインライン式リンクレスフランシス水車の製品化に成功する。フランシス水車は水力発電用水車として最も広く使われているが構造が複雑なため費用もかさみ、広いスペースを必要としたためマイクロ水力発電には不向きだったが、既設の送水管の一部を切り取り、水車をパイプ状にはめ込むインライン方式を採用したことで大幅なコストダウンと保守作業の軽減化が図られたのだ。このリンクレス・ハイドロパワーが電力会社などに広く支持され同社の業容は拡大していく。そして、2012年に再生可能エネルギー発電の「固定価格買取制度」が始まる。この政策も同社にとって大きな追い風となる。固定価格で電力会社に売電ができるため都道府県などの上下水道事業者がこぞってミニ水力発電に参入しはじめたのだ。

 そして、その多くに田中水力はミニ水力発電プラントを納入している。同社は10 0 0キロワット以下のミニ水力において全国で40%のシェアを持つ。今は製造が間に合わないぐらい忙しいそうだ。固定価格買取制度が続く限り、この分野の事業は拡大を続けていくだろう。

 田中さんは父親が日本メーカーの米国法人勤務だったため米国で生まれ、米国で育つ。住まいの近くのイリノイ大学経済学部を卒業し、モトローラ、アジレント・テクノロジーを経て、2004年に中古住宅を購入し、修繕して販売するフリップ事業で起業する。短期間で高い収益が得られることから米国では個人でこの事業に参入する人も多いという。そして、2009年に日本を旅行で訪れた時、田中水力機械製作所のオーナーである大叔母から入社を勧められ、2 010 年に同社に入社する。母国日本や日本の企業社会にも興味があり、良い経験になると思い決断したそうだ。営業担当、副社長を経験し、2012年に36歳で代表取締役社長に就いている。

 田中水力に入社して4年、社員の仕事に対する責任感の強さとみんなで成果を産み出そうとする姿勢はすばらしく、日本の製造業の品質の高さはここにあると実感している。今後の課題は人材の育成・確保と海外進出。田中水力は入社間もない経験の浅い20歳代の社員が多い。この若い社員達にどんどん経験を積ませ育て、ミニ水力発電を通して社会に貢献し続ける強くて安定した会社にしたいと思っている。そして、もっと力をつけて自力で海外へ販路を広げていきたいと考えている。上下水道や水路は世界中どこにでもあるわけで力を蓄えた田中水力が世界中の国や地域で活躍し、再生可能エネルギー革命に大きく貢献する日が間もなくやってくるだろう。

田中水力株式会社
代表取締役 田中 幸太(たなか こうた)
所在地 :相模原市中央区南橋本4-3-15
従業員数:40名 資本金:5,000万円
売上高 :7.97億円(平成25年度実績)
事業内容:発電用水力プラント一式の設計、製作、販売、工事、保守

URL:http://www.tanasui.co.jp/
田中幸太社長
左:ベルト掛け方式  右:直結方式
リンクレス・ハイドロパワーのランナ