かわらばん地域版47号 2017年1月
相模原菓子工房 ら・ふらんす
 家族を幸せにするお菓子づくりを
相模原市中央区横山台にある相模原菓子工房「ら・ふらんす」横山台店に代表取締役社長の村中昭文さんを訪ねました。村中社長は九州の天草に生まれ、父親は近海のイワシやアジなどをとる巾着船の網元をしていたそうだ。村中さんは地元の高校を卒業後、漁師の道は選ばず、親族の紹介で船橋にあった製菓店に就職する。大きな工場のような製菓店だったので「ここでは腕が上がらない」と思い、調布や吉祥寺などで洋菓子やお洒落なレストランを展開していたストロベリーファームに飛び込み、働くことになる。そこで4年間、洋菓子、アイスクリーム、チョコレート、パンの製造をがっちり学ぶ。その頃はアメリカからハーゲンダッツが日本に上陸して話題になっていた頃で、村中さんもその美味しさに衝撃を受けたそうだ。ハーゲンダッツに負けないアイスクリームを作りたいという経営者の命を受けて米国に研修にも行き、210種類ものアイスクリームを食べて回ったそうだ。
その後、先輩が開いた藤沢湘南台の洋菓子店に移る。ストロベリーファームも湘南台のお店も立地に恵まれ、最新の洋菓子がお客様に受け入れられる繁盛店で、村中さんはもっぱら商品開発と製造の現場を任されていた。
接客や経営の勉強もしたいと思い、愛川町にあった「ガトウミヤ」という店主と売り子だけの小さな洋菓子店に移る。入店当時はショートケーキ、モンブラン、チーズケーキといった定番の洋菓子主体のごく普通の洋菓子店だったが村中さんはショコラやムースといった目新しい洋菓子や焼き菓子を開発し、店頭にも積極的に出て、売り上げを大きく伸ばしていった。売ることの大変さや接客のコツのようなものをここで学んだ。
そして、1995年に現在の横山台店のすぐ近くに中古のオーブン1台とショウケース1台を買い、奥さんとスタッフと3人で切り盛りする小さな洋菓子店を開業する。お店は最初から順調で売切れて閉店といった毎日が続いたそうだ。村中さんは「千円札1枚で家族4人が楽しめる」そんなお店を目指したそうだ。カリッとした歯ごたえが心地良い1個120円の「横山シュー」も爆発的に売れ、1日睡眠が2時間、朝は5時から働き詰めの日々が続いたそうだ。売上は初年度から四千万円を超え、4年目には1億円に。
手狭になったため、長年思い描いてきた理想の洋菓子店を自ら設計し、2000年に現在の地に新店舗をオープンさせる。この店もお客様が徐々に増えていき製造と接客が追いつかなくなり、2006年に城山に新たな店舗をオープンさせている。
クオリティーの高い洋菓子を手頃な価格で提供するという開業当時からの姿勢は今も変わらない。だから、震災で大きく消費が落ち込んだ時も売り上げは落ちず、着実に成長を続けているのだろう。人や材料、設備への投資を惜しまず続けたため、社長自身は15年間、愛川町の古いアパート暮らしを続けたそうだ。
今、社長は焼き菓子の商品開発に力を注いでいる。焼き菓子の商品化はとても難しく、材料、その配合、焼き時間を変えた試作を繰り返し、着想から商品になるまで3、4年はかかるという。バターカステラやバームクーヘンも商品化し、とても評判がいい。
レストラン、パン、洋菓子をトータルで提供するお店を持つことを目標としていた時期もあったが今は規模を追わず、地域のお客様に愛されるお店、地域になくてはならないお店であり続けたいと強く思っている。
人はごはんの炊けた匂いやお風呂が沸いた匂いで家庭の温かさや幸せを感じる。お菓子を食べたときも同じだ。「ら・ふらんす」もそんな幸せを感じる美味しいお菓子を相模原の地で創りつづけて欲しいと願う。
相模原菓子工房 ら・ふらんす
代表取締役 村中 昭文(むらなか あきふみ)
所在地 :相模原市中央区横山台2−9ー25
従業員数:24名 売上高:4億円
事業内容:洋菓子製造・販売・カフェ
代表取締役の村中 明文さん