銅ブスバー、銅・黄銅丸棒、メッキ用銅アノードなどの伸銅品を製造する権田金属工業株式会社の権田有紀子社長を相模原市中央区宮下の本社工場へ訪ねました。
人類が初めて手にした金属“銅” は、古くから私たちの生活をはじめ、文化の発展に大きく貢献してきた。長い年月をかけて築かれた銅の加工は、今なお自動車、半導体、電気設備の部品などとして、私たちの生活や産業の発展に大きな役割を果たす。伸銅品とは、純銅や銅合金を板・条、管、棒などの形状に加工した製品をいう。また、銅は電気伝導や熱伝導に優れ、加工が容易であり、耐食性があるなど数々の特性を持つ。これらの特性から現代では電気具や熱交換器、電動モータなどに欠かせない材料となっている。こうした伸銅品の発展と共に、権田金属工業も歴史と伝統を築いてきた。1918年（大正7年）創業以来、“良品共栄” を企業理念としている同社は、良品の提供により社会の発展に貢献し、お客様・仕入先様・地域の皆様と共に繁栄し続けること望んでいる。
主力製品である銅ブスバーは、熱間圧延材を冷間圧延で仕上げており、冷間ロール幅の自由度が高く、きめ細かな幅寸法の製造が可能だ。材質はタフピッチ銅と無酸素銅がある。特に国内でも製造できる会社が少ない150㎜以上のブスバーを製造できる強みを持つ。また、圧延と鍛造・旋盤加工で製造する銅丸棒・黄銅丸棒は、製造範囲が広く寸法精度に優れている。材質はタフピッチ銅と無酸素銅に加え、快削黄銅、カドミレス黄銅、ネーバル黄銅など幅広い。銅ブスバー同様に他社では製造できない大型サイズの製造を得意としている。加工品としては鍛造・加工品部門では継ぎ目のない銅リングで国内の電車のモータ用リングを製造し、全国約70％の高いシェアを有している。同社は伸銅品製造において、技術力が高く高品質な製品が多い国内市場においてもトップクラスの存在感を持つ。
そんな同社を現在率いるのが、四代目社長の権田有紀子社長だ。大学卒業後、非鉄金属の大手商社で総務・営業を経験し、2018年4月に同社に入社。1年目は製造現場での業務に専念し、2年目以降は営業部担当部門で経験を重ねる。先代であり父である権田源太郎氏逝去により、2022年12月に急遽代表取締役社長に就任された。先代から今後3年くらいで事業承継を進めていこうかと話していた折に、源太郎氏に末期がんが見つかる。
そうした状況から、次第に有紀子氏が社内決裁業務や金融機関交渉など社長業務を代行する場面が増え、必然的に社長職務を行うようになったそうだ。とはいえ社長としてやるべき業務にほとんど触れないまま就任したため、初年度はあっという間に過ぎたと有紀子氏は振り返る。社長就任直後に一番苦労したのは、創業の地である横浜駅西口に所有するビルの建て替え事業。先代と前総務部長が二人で13年かけて進めたプロジェクトだが、竣工前に両名とも亡くなってしまったため、どうすればよいのか分からず本当に困ったそうだ。そうした中、施工会社である大林組や、共同建て替え事業者であるURの方々が事細かに教えてくれたので助かったという。上棟時には先代の思いも込めて柱に自分の名前と源太郎氏の名前を並べて書き込んだ。こうして、2023年12月にイオンモールが施設運営を行う「横浜ヴェールスクエアCeeU」が竣工した。施設名であるCeeU は、同社の主力製品である「銅」の元素記号「Cu」と友人や親しい人への挨拶「See You」（またね）を掛け合わせたもの。新たな人・モノ・体験との出会いが生まれ、横浜駅西口エリアに愛着を持ち、それぞれの思いが伝わり・交わる場となることを目指している。就任直後から困難にも負けず、大きなプロジェクト事業を成し遂げた。
そんな権田社長の趣味は読書と観劇。読書は主にミステリーが好きで、観劇は文楽（人形浄瑠璃）とバレエを家族や友人たちと一緒に楽しんでいる。またゴルフをする機会もあり、コースに出る前には、関連会社が運営する「ボールパーク」で練習するそうだ。距離も長くロングヒッターにも最適で、ゴルフスクールや試打会なども充実している。
今年、創業107年目を迎える権田金属工業株式会社。権田社長は、「私たちの強みは” 顧客の要望に細かいところまで応えられる” ところ。当社は比較的多品種少量生産になるため、お困りごとを営業部門がヒアリングし、課題解決に即応できることが強み。これからも新規サイズの拡充など新しいことにチャレンジしてお客様の要望に応えたい。これまで私たちは経営危機があるごとに多くの取引先に助けられており、いかに長く会社を続けられるかというより、“何年たっても従業員と取引先に存続を望まれる会社であり続けたい”」と語る。これからも新たなことに挑戦し続ける権田有紀子社長と社員の皆さんに心からエールを贈ります。
代表取締役： 権田 有紀子（ごんだ ゆきこ）
本社所在地： 相模原市中央区宮下1 丁目1 番16 号
従業員数： 80 名
事業内容： 銅ブスバー、銅・黄銅丸棒、メッキ用銅アノード、
銅・黄銅リングの製造・販売、不動産賃貸
URL：
https://gondametal.jp/
権田社長 