【プロフィール】
東邦電子株式会社
技術部 センサネットワーク課 鶴畑 清臣(つるはた きよおみ)
広島県呉市出身、東京都日野市在住、61歳
鶴畑さんは武蔵工業大学(現在の東京都市大学)の機械工学科で電気・油圧系のコンピュータ制御関連を学び、1980年4月に大手計測制御会社に入社しました。入社後は主に海外の石油化学プラント向けオートメーションシステムプロジェクト、エンジニアリング部長、2年半の海外駐在、新事業開発室長を務め、2016年3月に退職されました。2017年6月に東邦電子株式会社に入社、入居のきっかけとなったneoMOTE無線センサネットワーク事業を担当されています。
趣味は高校時代に父親と始めたドイツ製・スイス製を中心としたヨーロッパ製のHOゲージ鉄道模型の収集と走行です。
新しいことや人が敬遠するような困難な問題・課題にチャレンジすることが好きで、「大胆かつ慎重に」と「本質を見極める」を信条に何事にも取り組まれる鶴畑さんです。
【入居のきっかけは?】
1963年創業から55年の歴史がある東邦電子は、温度計測と制御(温調)を核としたセンサと調節器を国内で設計・製造しています。お客様第一に、品質・技術にこだわるmade in Japan志向の会社で、本社はSICから徒歩10分です。2017年6月に住友精密工業からneoMOTEというブランド名の無線センサネットワーク事業を継承しました。このneoMOTE無線センサネットワークの要素技術と製品を開発するために入居しました。
【事業紹介】
neoMOTE無線センサネットワークは、温度や湿度等を測定するセンサを広範囲に設置して無線ネットワークでデータを収集して利活用するシステムです。この無線センサネットワークの代表的な初期研究は1990年後半の米国のカリフォルニア大学バークレイ校のスマートダスト(Smartdust、賢い塵)プロジェクトです。無線通信機能と演算機能(CPU)を組み込んだ超小型センサチップを内蔵したスマートダストと呼ばれるセンサノードを上空から数多く散布し、測定データを無線ネットワークで収集して軍事や環境測定に応用することを目指しました。センサノードは電池駆動のために低電力消費で、相互に無線通信して自律的に網目状のメッシュネットワークを構築し、隣接するセンサノードを経由して最適ルートで測定データを送信するマルチホオップを実行します。当時としては斬新で時代を先取りした研究でした。この研究成果を2000年代初頭に米国で製品化したのがMOTE(粒)という無線センサネットワークです。neoMOTEは、このMOTEを母体とする代表的な無線センサネットワークです。
「neo」はギリシャ語で新しい、近代的という意味です。現在のneoMOTE無線センサネットワークはBEMSと呼ばれるビルエネルギー管理システムの電力消費や温度・湿度等の環境の見える化、HEMSと呼ばれるホーム(家)エネルギー管理システムの電力消費と環境の見える化、農業ICTと呼ばれる農場の気候観測やビニールハウス内の環境の見える化等に活用されています。
入居したセンサネットワーク課の4名は、neoMOTE無線センサネットワーク製品をお客様に滞りなくお届けすることと並行して、要素技術と製品の開発に取り組んでいます。入居メンバーの青木さん、河本さん、木村さんの3名はバリバリのソフトエンジニアで、インタビューした鶴畑さんはビジネス開発を担当されています。
【今後の目標】
今後の目標は、次世代無線センサネットワークの開発です。次世代センサネットワークは、東邦電子の核である温調の「測る」と「制御」、 無線センサネットワークの「測る」と「通信」、さらに測ったデータを利活用するためのクラウドや A I といった「 I T 」を融合したものです。
温調の「測る」、「制御」は O T (Operational Technology、運用技術)と呼ばれる機器・設備の温度制御や運転に関する技術で、信頼性、持続性、安定性を重視する保守的な特性があります。 I T (Information Technology、情報技術)は新規性、迅速性、スループット(処理能力)を重視する変化志向の特性があります。O Tと I Tの融合は以前から議論されていましたが、なかなか実現できませんでした。現在盛んに議論され実用化が進んでいるIoTでようやくOTと I Tの融合がはじまりました。
「東邦電子は、無線センサネットワークで O T と I T を融合した次世代無線センサネットワークにチャレンジします。」と、このチャレンジへの決意を熱く語ってくださいました。
東邦電子株式会社
SIC-2 207号室
URL
http://www.toho-inc.com/