かわらばん

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     専門家コラム
かわらばん入居版64号 2009年8月

企業をサポートし隊!!
   シリーズ企画 企業支援の現場から・・・デザイナー編
情報の力関係

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  左を見よ

 突然ですが、上の絵を見て下さい。これはメディアクリエイター佐藤雅彦さんの「毎月新聞」というコラムの1つで用いられた絵です。はじめは矢印につられて右の文章に目をやってしまったのではないでしょうか。でも文字を見ると「左を見よ」と書かれています。これは表現要素として図形は文字よりも情報訴求力があることを示しています。この紙面を読む時にも文章より先に上下にある絵の方に目がいってしまうはずです。一般的に図形の方が文字よりもその力が大きいことが多いのですが、次の絵を見て下さい。

 この図形は「正11 角形」ではなく、実際は正9 角形でふたつも頂点が足りません。矢印の話の後なので、この絵も何かあると推測したかと思いますが、もし数学の教科書にこれがあったらその間違いに気付かず「正11 角形」と信じてしまうのではないでしょうか。これは先ほどの例とは反対に図形よりも文字の方に情報訴求力があったことを示す例です。私たちの頭の中では、情報の力関係を無意識に判別しモノゴトを感じ取っているのです。

同時に伝わっていること

 前述した例は要素を出来るだけ抑えて示してありますが、普段はもっとたくさんの要素が絡み合ったものごとに私たちは触れています。言葉で何かを伝える時、まともなことを話していても妙に早口な人だなとか、なんか頑張っているとか、イライラしているなどのことも同時に相手には伝わっています。たとえどんな手段や表現で伝えても同時に伝わってしまうことは必ずあります。それは人自身から出ているものであったり、言葉にならない部分です。
 私は、むしろこの同時に伝わっていることの方に人の心を動かしたりする力が潜んでいると思います。デザインの仕事ではこのようなことを意識して伝わり方を設計するという作業をします。文字・図記号・写真などを駆使すれば意味を理解できるモノは作れます。一方で、人の感性を響かせるモノには意味以外に人一倍こだわり抜かれた「何か」があるものです。デザインの仕事はスタイリッシュに作り上げることが役割ではなく、むしろ無骨で地味に作ることにこだわった方がその人らしく見えて好感が持てるのではないかという提案もします。
 このように「伝わり方」を考えるのは意外と楽しいことで、私はいつもそんなことを確認しつつ表現活動をしています。伝わり方を考えることで伝え方にも工夫できることがたくさ
ん見えてくるかもしれません。