かわらばん

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     専門家コラム
かわらばん地域版73号 2021年7月

特別連載「社会保険労務士の現場から」(全3回)
   ー第1回 新型コロナウイルス感染症への対応ー                              鈴木道士行政書士・社会保険労務士事務所 代表 鈴木 道士
 すでに1年以上も続く新型コロナウイルス感染症への対応について、どの企業様も何かしらの対応を迫られたのではないでしょうか。まずは、第1回として、新型コロナウイルス感染症に社会保険労務士として、どう対応してきたかをお話したいと思います。

◇新型コロナウイルス感染症の始まり◇

 令和2年の新年を迎えた頃、まさか、新型コロナウイルス感染症がここまで感染拡大するとは誰も思わなかったと思います。しかし、3月の下旬になり、市中感染も日に日に増え始め、私は「本格的に雇用調整助成金の申請が増える」と危機感を覚えました。

 早めに労働局の助成金センターに内容を確認しようと、何度も電話しましたが繋がらず、ホームページの内容を自分なりに解釈しつつ書類の準備をしていたのですが、内容がちょくちょく変わるので、関与先に正確な情報を伝えるため、直接行って確認するしかないと思い、何とか予約を取り、緊急事態宣言が発出されている中の4月14日に、助成金センターに行きました。するとそこはまさに三密状態、ビルの5階なので換気が悪い密閉、狭い廊下でたくさんの相談者が待ち、また、予約なしで相談者がひっきりなしに来所するので、密集、密接、感染リスクを考えると「これはまずい」と思い、帰ろうかと悩みましたが、せっかく必死の思いで予約をして、何も有益な情報が無いまま帰るわけにもいかず、廊下に並べられた椅子に座り30分程度待ちました。そして、窓口に通され担当者とお話をして、今後の申請の進め方を確定させるつもりでしたが、担当者からは終始「現在の状況ではこのような流れですが、恐らく緩和措置などの改正が入ります」と言われ、これから助成金の申請は間違いなく増えるのに、どうしようかと頭を悩ませながら帰ったのを覚えています。あの当時のことを思い返すと、私だけではなく行政の方々も先行き不透明な新型コロナウイルス感染症への対応に試行錯誤しながら必死に対応していたのではないかと思います。

◇新型コロナウイルス感染症と雇用調整助成金について◇

 雇用調整助成金について、後手後手に回った手続き内容等を考えると色々と文句も言いたい方もいらっしゃると思いますが、はっきり申し上げて、よくここまで緩和してくれたと思います。そこで、従来の制度と特例措置について、簡単に比較してみたいと思います。以下( )内を特例措置とお考え頂ければと思います。

①生産性指標3か月で10%以上減少(1か月で5%以上減少に緩和)
②雇用保険の被保険者が対象(雇用保険の被保険者以外も対象、正確には雇用調整助成金ではなく緊急雇用安定助成金と言います)
③助成金の日額上限額が8,330円(助成金の日額上限額が15,000円に引き上げ)
④計画届の事前提出(計画届等の書類の省略)
他にも緩和されましたが、率直に助かったのが、②、③、そして何よりも嬉しかったのが、提出書類の省略、特に今までは計画届を事前に提出しないといけなかったのが不要になり、非常に申請し易くなりました。本助成金の問題点は、計画届の事前提出と、膨大な申請書類の作成がネックになり、申請を断念する事業主が多かったことです。令和3年5月1日以降分の申請からは、少しずつ要件が厳しくなり、一定の条件のもと日額上限額も下げられますが、まだまだ従前よりは、かなり手続きが緩和されています。

 令和3年6月30日現在、8月までは、特例措置の延長が決まっておりますし、8月以降も縮小され、要件が厳しくなりながらも、さらに延長されると推測できます。ですので、解雇等をお考えの事業主は、せっかく一緒に頑張ってきた従業員を解雇する前に、雇用調整助成金の申請を考えてみることが必要だと思います。解雇は時には必要なこともありますが、大切な従業員を解雇する前にやるべきことがあるのではないかと思います。

〇 鈴木 道士 〇 
鈴木道士行政書士・社会保険労務士事務所 代表 
大学卒業後は都内の建設会社に入社し、都営地下鉄大江戸線の現場監督などを担当。その後、平成11年に社会保険労務士の資格を取得。資格予備校での講師業を経て平成18年に独立開業。以後、人事・労務の専門家として、地域の企業・経営者の支援に取り組んでいる