かわらばん

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     専門家コラム
かわらばん地域版74号 2021年9月

特別連載「社会保険労務士の現場から」(全3回)
   ー第2回 新型コロナウイルス感染症への対応②ー                              鈴木道士行政書士・社会保険労務士事務所 代表 鈴木 道士
まったく収束する気配のない新型コロナウイルスですが、第2回も、引き続き新型コロナウイルス感染症に社会保険労務士として、どの様に対応したかをお話ししたいと思います。

◇新型コロナウイルス感染症への対応②◇

 新型コロナウイルスが流行して、すぐに私の事務所にも、「うちはどう対応したらいい?」「休業させた方がいい?」「緊急事態宣言が出ているから給与は払わなくていい?」「テレワーク?」「時差出勤?」「雇用調整助成金は賃金を何割補償すればいい?」等々、たくさんのお問い合わせを頂きました。この様な状況の際に、一番しなければならないことは、とにかく従業員とよく話し合うことです。会社がどの様な対応をしたいかをよく説明して理解を求め、感染防止のために、テレワークや時差出勤等を検討する。緊急事態宣言が出たことを理由に即給与を支払わなくてもよいということにはならないので、雇用調整助成金等を使い休業させる場合については、その必要性と休業手当の割合を説明し協議する。そして、経営不振によりやむを得ない状態となった場合には、最終手段として従業員に説明し協議し、手順を踏んで人員を整理する。

 この様に、会社として従業員と話し合いの場を持ち、説明義務を果たすことで、万が一、最終的に解雇等やむを得ない状況になった場合も、いくつかある整理解雇(リストラ)の要件をクリアしていくことになります。もちろん、解雇という最終手段はできる限り回避すべきだと考えますが、やむを得ず整理解雇を行う場合にも、何の説明も協議もなく解雇を行ってしまうと、コロナ禍での経営不振の上に、更に労働紛争のリスクを抱えることになりますので、会社が出来る最大限の感染防止策を講じ、従業員とよく協議をして説明義務を果たすことが絶対条件となります。

 コロナ禍であるからこそ、従業員の協力なしでは乗り切ることは出来ないと思います。コロナはいずれ収束しますので、その日まで何とか乗り切る策を労使双方で考えていくことが重要です。

◇雇用調整助成金の最大の弱点◇

 雇用調整助成金の最大の弱点は、社会保険料が免除にならないことです。社会保険料の猶予については、新型コロナウイルスの影響により納付が困難な場合で、一定の条件を満たした場合は認められることがあります。この場合でも、あくまで猶予であって免除ではないということに注意が必要です。また、雇用調整助成金を使って従業員に休業手当を支払っている間も社会保険料が免除になりません。この社会保険料の負担が、ボディーブローのように会社にダメージを与えてきます。ですので、どうしても休業に至らない状況に戻していかなければなりません。飲食店等のように、政府から休業要請が出され休業している場合などは、一定の補助金が支給されますが、それでも厳しい経営状況の会社が多いです。補助金等がない業種の場合は、何とかして雇用調整助成金を受けなくても済む状態に戻さなければ少しずつ疲弊していきます。ですので、雇用調整助成金のメリットを生かしつつ、その最大の弱点を把握して、今後の事業展開を考える必要があります。

〇 鈴木 道士 〇
鈴木道士行政書士・社会保険労務士事務所 代表 
大学卒業後は都内の建設会社に入社し、都営地下鉄大江戸線の現場監督などを担当。その後、平成11 年に社会保険労務士の資格を取得。資格予備校での講師業を経て平成18年に独立開業。以後、人事・労務の専門家として、地域の企業・経営者の支援に取り組んでいる。