Booster Brain Consulting 中小企業診断士 齋藤 崇史
かわらばん地域版101号 2026年3月
専門家コラム
これからの宇宙ビジネスの可能性ー非宇宙の中小企業にも開かれた新たな成長機会ー
2026年、神奈川県の幕開けは、象徴的な光景から始まりました。横浜市役所アトリウムで、国際宇宙ステーションからの初日の出を中継するイベントが開催されたのです。この出来事は、宇宙ビジネスを取り巻く現在の潮流を示しています。背景には、宇宙産業を戦略的な成長分野と位置づける国や自治体の動きと、民間主導の市場拡大があります。
2024年、世界経済フォーラム(WEF)は、2023年時点で6,300億ドル規模だった世界の宇宙産業が2035年に約1.8 兆ドル規模に成長するとの予測を示しました。注目すべき点は、この成長がロケットや人工衛星の開発そのものだけでなく、データ利用、サービス、地上ビジネスへの応用によってなされるということです。宇宙産業の成長とは、宇宙データが他産業での新たな付加価値創出に使われていくプロセスでもあります。
日本においても、政府は2023年の宇宙基本計画において 、2020年に4兆円だった市場規模を2030年代早期に8兆円に倍増させる目標を掲げました。10年間で1兆円規模の宇宙戦略基金をはじめとする支援策を打ち出し、宇宙関連産業を中長期的に育成する方針を明確にしています。加えて、自治体レベルでも宇宙産業を地域の経済と豊かさの成長エンジンと捉え、スタートアップ支援や企業間連携の促進などが進められています。これらの動きは従来の宇宙関連企業だけを対象としているものではありません。
宇宙ビジネスの現場では、非宇宙企業の参入が強く求められています。実際、宇宙×○○を考えよう、という掛け声をよく聞きます。○○に入るのは農業、防災、金融、不動産、エンタメなど一見、宇宙とは関係ないものです。しかし、宇宙技術、例えば、人工衛星が取得する地球観測データの活用により経営革新を起こそうとする
他業界の企業が続々と宇宙ビジネスに参入しています。宇宙ビジネスを特別なものと捉えるのでは無く、まず自社の課題を考え、その課題解決のために衛星データが役立つのでは?と考えることが宇宙ビジネス参入の第一歩になるわけです。
一方で、技術力に自信のある中小企業にとっても、市場は大きく変わりつつあります。国主導のプロジェクトだけでなく、宇宙ベンチャー向けに製品やサービスを提供することで、市場拡大の恩恵を直接取り込むチャンスが生まれています。従来製品や技術の提供先を広げるという発想で十分に成長の余地があります。
こうした新たな挑戦を後押しするのが、公的支援制度の存在です。支援は補助金や助成金などの資金支援だけではありません。公的支援機関によるプラットフォームの設置などは、共同開発や異業種連携を通じて宇宙との接点をつくるための仕組みでもあります。
宇宙ビジネスの本質は、「自社の強みをどの市場で活かすか」、そして「自社の課題をどのように解決するか」にあります。国や自治体の後押しを追い風に、リスクを抑えつつ宇宙を次の成長分野として捉え、経営革新の方策を検討することは、企業経営にとって有力な選択肢の一つと言えるでしょう。
〇 齋藤 崇史 〇
Booster Brain Consulting
中小企業診断士
JAXA での経営企画業務、国内外の金融機関での投融資実務、内部管理業務などに従事した経験で培った経営視点を背景に、製造業の販路開拓支援や農家など非宇宙企業の宇宙ビジネス参入等、中小企業の経営革新を支援している。英Warwick大学大学院経営学修士(MBA)。