当研究室では、普段は目立たないところで私たちの毎日の生活を支えている「光」に関する研究をしています。「光」はあらゆるものの中で最も速く伝搬し、その速さは秒速30万kmで1秒間に地球を7回転半も回るほどの超高速性を有しています。このため、光通信・光情報処理や光応用計測・レーザ加工など、幅広く産業に応用がなされています。当研究室では、大きく分けると「光」の情報通信応用と「光」のセンシング・計測応用を目的に研究に取り組んでいます。
まず情報通信応用ですが、光通信やフォトニックネットワークのさらなる高速化・大容量化・高機能化を目指しています。近年では光通信は家庭でも利用されるようになり、身近となっていますが、インターネットなどの情報通信利用が急増し、ネットワーク容量の限界を越えてしまうエクサフラッドの状態が予想されはじめています。従来の光ファイバ通信では、C帯(波長1530~1565nm)とL帯(1565~1625nm)が利用されてきましたが、通信容量を飛躍的に拡充するための周波数資源の開拓を行っています。
具体的には、量子ドット半導体による高性能レーザや波長帯域が数百nmにわたる超広帯域光の生成、新たな光ファイバ伝送路であるフォトニック結晶ファイバによる伝送システム実証などを行っています。また、光-電子融合技術としてのシリコンフォトニクスにも取り組み、複数の研究機関と共同で、超微小かつ超高速な光デバイスの研究開発を行っています。
もうひとつの柱である光センシング・計測応用では、まず広帯域波長可変中赤外光源の開発を行っています。中赤外領域では、様々な化学物質やガスに物質固有の吸収スペクトルが現れ
るため、例えば環境計測装置などへの応用を想定しています。2009年度は、光学機器メーカーと共同で、約100nmの波長可変性を有する3μm帯のコンパクトかつ高出力光源を作製しました。(写真参照)また、当研究室ではテラヘルツ波の発生や計測応用の研究にも着手しています。光と電波の間には、これまで利用が困難であり未開拓領域とみなされていたテラヘルツ波が存在します。テラヘルツ波は様々な物質を透過すると共に物質固有の反応を示し、人体にも安全であるため、安心・安全な社会実現のための新しい非破壊・非接触の計測技術としての活用が可能です。一例としては、文化財(特に古典絵画や建造物)にはほとんどの作品に修復の歴史があります。文化財がどの材料で創られているかを分析することは、劣化を最小限に抑える事や正しい修復を行う上で、極めて重要な作業です。当研究室では、テラヘルツ波を用いた文化財の非破壊計測を行い、文化的側面で技術的貢献ができないかと考えております。
「光」の持つ属性を極限まで活用する超高速光量子エレクトロニクスの研究開発により、情報通信やセンシングへの応用を通じて、社会へ貢献していきたいと考えています。
【お問い合わせ先】
共同研究について:
青山学院大学 研究支援ユニット課長 杉野 郡二 ☎042-759-6056
http://www.aoyama.ac.jp/college/ssi/index.html
理工学部・研究科について:
青山学院大学 学生支援ユニット 学務グループ
理工学部・研究科担当 ☎042-759-6033
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