かわらばん

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     社長のコラム
かわらばん入居版97号 2012年6月

中嶋社長のつぶやき
   断固、守るべきものは守り、変えるべきものは変えよ
 ある方から、「重職心得箇条」佐藤一斎著を読んでみたらと紹介された。

 例えば、【第三条】「家々に祖先の法あり、取失うべからず。又仕来仕癖の習あり、是は時に従て変易あるべし。兎角目の付け方間違うて、家法を古式と心得て除け置き、仕来仕癖を家法家格などと心得て主株せり。時世に連れて動かすべきを動かさざれば、大勢立たぬものなり。」

【現代訳】「祖先の定めた家法はどの家(藩)にもあり、その伝統は受け継いで大事に守らなければならない。その他に仕来りや慣習というものもあるが、こちらの方はその時の状況に応じて改正すべきものは改正してもよい。
 ところが、これを取り違えて、守るべき伝統の家法を古めかしいものとして軽視し、いつでも改正できる仕来りや慣習の方を大事な家法のように守ろうとしたりするものである。時代の趨勢をよく見極め、その流れに対応して守るべきものは守り、変えるべきものは変える。重職たるもの、この判断力がなければ、天下の大勢に後れを取るものと心得ておかなければならない。」
(「佐藤一斎「人の上に立つ人」の勉強 坂井昌彦訳 知的生きかた文庫)

 今日は「昨日の続き」ではない。時代の動きを鋭く読み取り、大勢に後れをとるな。素早く変化に対応すること。しかし、大切にするものは守る。組織のリーダーとしての心構えを説いている。心に響く言葉である。
 佐藤一斎は、1772年(安永元年)美濃岩村藩(岐阜県恵那市)出身の儒学者。門下からは、佐久間象山、横井小楠などの英才を輩出。孫弟子に勝海舟、坂本龍馬、吉田松陰らがいる。「言志四録」は代表作で、幕末の志士たちに大きな影響を与えたと言われている。

 そして、「重職心得箇条」は、佐藤一斎が自藩の重臣のために書いた指導書。藩の重職についての心構えや目の付け所などの指摘が十七箇条で構成されている。その中の用語は、時代を感じさせる言葉ではあるが、幾つかの用語を現代風に読み替えれば、その内容は今日でもそのまま通用する。たとえば“重職”という言葉を、そのまま“重役”と読んでもいい。もう少し範囲を広げて“マネージャー”と読んでもいい。
佐藤一斎 銅像