かわらばん

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かわらばん入居版69号 2010年2月

企業をサポートし隊!!
   シリーズ企画 企業支援の現場から・・・メンター編
「地域発ベンチャー企業の役割」

 新事業創出における、地域発ベンチャー企業  の役割について少し考えてみたい。そして、その意義を見つめることで、事業活性化へのヒントになれば幸いである。
 これまで、バブル崩壊後の経済再生を掲げ、国を挙げての重要な課題のひとつとして新産業・新事業創出が叫ばれてきた。この課題に対して、ベンチャー企業が大きな役割と期待を担ってきたことは言うまでもない。第3 次ベンチャーブームと言われ、地域発ベンチャーに対する公的な政策牽引の起業支援体制も、ここ10年を掛けて、かなり充実され環境は整ってきた。さがみはら産業創造センターは、その中でもVC を持つ大きな位置づけである。BI  として機能し、入居企業と一体となって新事業創生を推し進めている。しかしながら、現下の経済環境・産業構造変化の中で、改革の実態は厳しい状況にあり、新たなイノベーションの方策を見出す必要があるとも言える。
 ベンチャーの一翼である大学発ベンチャーについて言えば、近年、大学も積極的に創業を支援する政策に転換しており、大学内外の起業環境の整備・醸成などで、その数では1996 年を起点とすると11 倍強となった。しかし、日本では、産業界と大学の目指す方向性が異なる点が依然として議論にある。即ち、企業は技術開発を通じて先進性や秘匿性を獲得し、利潤を生み出すことを基本姿勢とするが、大学は、公共性・公開性を基本とする研究の、社会への敷衍( フエン) や未来への便益を目指す向きがある。米国の産学連携の環境に比べ産業ニーズとの結びつきが弱く事業化への成功例も多くはない。現状では、日本経済・地域経済を再生するエンジンとはなり得ていない。
 こういった状況下で、産業界を熟知し、得意分野の産業技術力を有する地域発ベンチャーの役割に期待がある。 大学発シーズと産業界ニーズのデスパレー  を埋める存在として大きな役割が考えられる。
 これまでは、地域発ベンチャー企業の動きは、起業家等が自ら培ってきた技術を基軸に新事業を進めるスタイルが一般的である。今後の新事業を生み出す選択の一つとして、また、地域発ベンチャーの役割として、大学シーズと産業界ニーズをつなぐブリッジ役が考えられる。
 また、地域発ベンチャーが大手企業に埋もれた知財や技術を掘り起こし、自社の技術との融合を果たすことによって、新事業を創生する方策がある。これらは、埋もれる知の事業化に向けて、産業界を熟知し組織機動力を有する地域ベンチャー企業が、力を発揮する道である。米国でも、大学シーズと産業界ニーズをつなぐ有効なブリッジ役として、また、大手企業に埋もれた技術の事業化の発掘者として、地域発ベンチャーが産業の振興に大きく関わり始めている
事が最近言われている。
 2010 年も早2 ヶ月が経過し、時の速さを痛感させられる。そして、この時期は何時も「一年の計」への反省と想いを新たにする。毛利元就は「一年の計は努力にあり」とも言っている。一日々、精一杯の努力を重ねて新事業の成就をしたいものである。

注)1 地域発ベンチャー:ここでは大学発ベンチャーを除くベンチャー企業群と定義
注)2 BI(Business Incubator またはBusiness Incubation):企業孵化、事業創生と育成
注)3 デスパレー:産業界のニーズに繋がらず埋もれた大学や大学発ベンチャーの知財・技術 の谷。大手企業の埋もれた知財や技術(大きな投資で開発したが製品化できなかった)の谷

株式会社産創コラボレーション 代表取締役
SIC メンター 小林 守
上鶴間・竜泉寺三重塔  SICアドバイザー 権藤 徹志氏 画