かわらばん

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かわらばん地域版15号 2011年10月

顧客価値を創造し、顧客から選ばれる会社になる
   浜銀総合研究所 取締役・経営コンサルティング部長 寺本明輝(明るく輝く)
 前号(2011 年8 月20 日発行、「勝てる土俵で勝てる戦い方をしていますか」)では、ビジネスモデルの重要性についてお話しさせていただきました。
 ビジネスモデルとは、事業を通じて持続的に顧客に価値を提供していくための仕組みを設計したものです。ここでいう価値とは、顧客が製品・サービスの特長や他との違いを識別できることが前提であり、企業側の独り善がりの価値ではないことに留意しなければなりません。
 顧客にとっての価値のことを顧客価値と呼びます。顧客価値には、様々なレベルがあります。K. アルブレヒト(1993 年) は、「顧客価値は基本価値( 絶対不可欠)、期待価値( 当然実現すべき)、願望価値( あれば嬉しい)、未知価値( 驚嘆する) の4 段階から構成される」と提唱しています。
 基本価値と期待価値を充足しても、それらは、顧客との取引の資格を得た、すなわち土俵に上がる権利を手に入れた、という競争上の最低要件を充たしたに過ぎません。土俵の上で戦いに勝つためには、さらにその上の願望価値、未知価値のレベルまで顧客価値を高めていくことが必要となります。いわば顧客の期待とパフォーマンスがイコールの顧客満足ではなく、パフォーマンスが顧客の期待を上回る顧客歓喜あるいは顧客感動を創造することです。
 そのためには、製品開発や生産を行ううえで、「作り手がいいと思うものを作って売る」といった供給側の論理を優先させるプロダクトアウトの発想では顧客の期待とミスマッチが生じてしまいがちです。
 だからといって、「顧客が望むものを作る」といったマーケットインの発想では、自社
の保有技術や能力とのミスマッチが生じてしまう可能性があります。また、成熟した現代社会においては、そもそも消費者やお客様が必ずしも自分が欲しいものを明確に知っているわけでもありません。
 そこで、ビジネスモデルの構築にあたっては、従来の発想そのものを変えていかなければなりません。
 すなわちプロダクトアウトかマーケットインかといった二元論ではなく、双方の考え方を統合したマーケットアウトというアプローチが必要となります。
 マーケットアウトとは、

 ①顧客の視点に立ち、顧客との対話を通じ、顧客を理解し、顧客の期待を反映すること
 ②願望価値、未知価値を追求するために独自の技術や能力の向上を追求すること

の両者を同時に考え進めていくものです。会社は、「なくてはならない会社」「あってもいい会社」「あっては困る会社」に大別されます。現代は、「なくてはならない会社」だけが生き残れる会社です。
 そのためには、自社の製品・サービスが「顧客から選ばれる」ために、今一度、自社の製品・サービスを顧客価値の視点から捉え直してみることが有効と考えられます。
(出所)カール・アルブレヒト著、和田正春訳『見えざる真実』日本能率協会マネジメントセンター(1993年7月)pp197-168tから作成