かわらばん入居版90号 2011年10月
証言で綴るSICの歴史
 有限会社GMP創房
取締役 前田 圭一郎
― 第2回(2回連続でのご紹介です) ―
■SIC-1に係った専門家集団
SIC-1の構想策定と事業計画立案には、西澤正樹氏(現 亜細亜大学/同大アジア研究所 教授)を中心に、専門家集団=『関軍団』の関与がありました。
西澤氏は、当時、「フルセット型産業構造を越えて/中公新書(中央公論社)」などの著作で日本の中小企業に焦点をあて、日本の中小企業の優秀さを世間に訴えると同時に、今後の中小企業の在り方、特にアジアとのネットワークの必要性を訴えていた関満博氏(現 明星大学経済学部教授・一橋大学名誉教授)を中心にした、当時、『関軍団』と称されていた専門家集団のメンバーの一人でした(筆者もメンバー)。
当時『関軍団』はビジネスインキュベーション事業について高い専門性と志を有するメンバーからなる集団で、神戸市長田地区の震災復興支援(ケミカルシューズを中心とした地場産業復興)、大田区、三鷹市をはじめ、各地での主に公的主体によるBI事業立上の支援などを行っており、SIC-1においてもその専門性は発揮され、SICの礎を整える一助となったのではないでしょうか。
■SIC-1の3階建の理由=優れた設計者の存在
事業性を考えると、当然のことながら工事費には上限があります。当初の構想段階では、SIC-1は2階建を予定していました。当時の工事費としても決して高いとはいえないギリギリの額を工事予算として組んでおり、敷地面積と工事費を勘案すると、2階建を前提にした規模が精一杯との結論を出していました。
ところがプロポーザルにより選定された設計者(創夢設計/SIC-2、3の設計者でもあります)の知恵と工夫により、さらなる工事費の圧縮に成功=同じ工事費で収益を得る事業床の増床ができることになりました。工事費は当初予算と変わらず、収益機会が増えるのですから、その事業性は大きく向上することになります。現在のSIC-1は3階建ですが、これは上記の設計者の優れた設計力とBI事業及び地場産業への深い理解の証と言えます。
(以上)