かわらばん

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かわらばん入居版96号 2012年5月

中嶋社長のつぶやき
   ゲーミフィケーション
 最近、とても面白い勉強会に参加する機会があった。「ゲーミフィケーション※でビジネスモデルにどのような工夫が出来るか。」がテーマだった。

 「ゲーム」というと、囲碁、将棋などの伝統的なゲームがあるが、サッカー、野球などのスポーツとしてのゲーム、そしてコンピューターゲームから発展したオンラインゲーム、ソーシャルゲームなど多様な分野に広がっている。ビジネスの分野では、ビジネスゲーム、シミュレーションなどで「ゲーム」が活用されている。
 例えば、「ナイキプラス」は、歩数だけでなく、移動距離、移動速度、時間が測定でき、それがネットでシェアできる。東京で走りながら、北海道の友人や、ネットで見つけたランニング仲間とともに走ることができ、離れた場所でも「ゲーム」することが出来る。また、AKB48の「選抜総選挙」「選抜じゃんけん大会」は、計測、順位、勝敗、フィードバックなどの要素を含んでいる事例である。このほか、スターバックス、ディズニーなどの多様な事例から、ビジネスとしての可能性が拡大している。

 2011年8月、アメリカに本社を置き、IT分野の調査・助言を行う「ガードナー社」が、注目すべき大きなテクノロジーの1つとして「ゲーミフィケーション」という概念を選んだ。同社によれば「2015年までに、イノベーションを司る組織の半数以上が、そのプロセスにゲーム的な要素を取り入れ、2014年までに、グローバル企業2000社の内70%以上がマーケティングと顧客の維持のため、少なくとも一つ以上のゲーム化されたアプリケーションを持つだろう」という。

 「朝起きて歯を磨くと歯ブラシについたセンサーが感知して、歯磨き粉メーカーから『よくできました!10ポイント』と褒められる。朝食にコーンフレークを食べると、ケロッグから10ポイント。通勤にバスを使うと政府からエコポイントが支給され、それは減税の対象になる。定刻にオフィスに着いたら会社からポイント。打合せ先にバスにのらず歩いていくと、医療保険会社からポイント・・・。」カーネギーメロン大学教授のジェーシー・シェルが、講演の中で発表した未来のイメージだ。ゲーミフィケーションが日常空間に隅々まで展開したとき、我々の社会はこういったことになるかもしれないと言う。

 「ゲームとして扱えなかったものをゲームとして扱えるようになったことで、小売業やサービス業は顧客との関係性を新たな形で構築する手法を得ることが出来、仕事は生活するためにいやいやするものではなく明瞭なフィードバックによってたのしみながら行うことができるものへと変わる可能性を持ってきた。」

 私たちは、ビジネスの中で無意識にゲームを利用しているようだ。もう一歩踏み込んで、我々のビジネスモデルの中に「ゲーミフィケーション」の要素を取り込むことが新しいビジネスモデル創造へのチャンスかも知れない。

着想のヒント
 ・顧客との関係性強化のため、顧客のどういった行動  を変える必要があるか考える
 ・フィードバックを可視化できる活動があるか考える
 ・ハマる行動のプロセスにヒントを探す
 ・新しい技術の変化に気付く
 ・ルールを変える視点の中にヒントを探す
 ・複数のルールを融合する
 ・既存のビジネスモデルを見直す視点から考える


※ゲーミフィケーション:「ゲームの考え方やデザイン・メカニクスなどの要素を、ゲーム以外の社会的な活動やサービスに利用するもの」とされている。

≪参考≫
〇「ゲーミフィケーション」 井上明人著 NHK出版 2012.1.