かわらばん

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かわらばん地域版10号 2010年12月

月曜日会社に行くのが楽しいですか?
   株式会社浜銀総合研究所 経営コンサルティング部 主席コンサルタント 寺本明輝
 私は、講演の場をいただくと「皆さんは、月曜日に会社に行くのが楽しいと感じていますか」とよく質問しています。参加者が50人の場合、「楽しい」と答えていただける方は、通常4-5人といったところでしょうか。遠慮して手を挙げない方もいらっしゃいますので、実際のところはわかりませんが、職業柄、数百の企業の現場を観てきた経験から申し上げると、仕事・職場を楽しんでいる方は、残念ながら必ずしも多くないと感じています。
 企業の変革には、戦略(Re-structuring)と仕組み(Re-engineering)、そして社員の意識の集合体である風土(Re-minding)の三位一体の取り組みが必要となります。「二流のプランと最上の実行は、最上のプランと二流の実行よりも常に優れている」という言葉がありますが、どんなに優れた戦略や仕組みがあっても、そこで働く社員のやる気がみられない、すなわちモチベーションが低い場合は、当然のことながら高いパフォーマンスは期待できません。
 モチベーションについての研究には様々なものがあります。モチベーション理論は、「人を動機づけるものは何か」といった欲求そのものに焦点を当てた《内容理論》と「人はどのように動機づけられるか」といった欲求そのものよりも、なぜ欲求が生まれ、どのようなプロセスで行動するのかを説明する《過程理論》に大別できます。
 これらの研究によれば、働く人は様々な欲求をもっており、また欲求が行動につながるプロセスにも多様なパターンがあることがわかります。そこで、自社で働く人の欲求を把握し、その欲求に応じたインセンティブを的確に与えることが、人のやる気と努力を引き出し、高いパフォーマンスを生み出すために重要となります。
 インセンティブには、大きく分けて五つあります。
○第一は、給与、賞与などの金銭的インセンティブ。
○第二は、人を評価して地位や権限や名誉を与える評価的インセンティブ。
○第三は、上司や仲間の個性や魅力いは組織風土との親和性などにより帰属意識を高める人間的インセンティブ。
○第四は、経営理念や経営者の思想への共感により組織へのコミットメントを高める理念的インセンティブ。
○第五は、仕事の達成など組織への貢献において、自分を活かせると強く感じることができる組織の状況を創り出す自己実現的インセンティブです。
 これらのうち、私たちは、金銭的あるいは物質的報酬につい目を奪われがちですが、「何のために働きたいのか」「誰と一緒に働きたいのか」といった精神的報酬にも注目しなければなりません。ややもすると青臭いと思われがちな精神的報酬について、経営者と社員が共に考え、話し合い、会社の目指すべき姿と働きがいの方向性を擦り合わせていくことがモチベーション向上にとって大切なプロセスとなります。
 これらのプロセスを通じて得た気づきにより、マネジメントの仕方も社員の働き方も変わってくると、月曜日に会社に行くのが待ち遠しくなってくるかもしれません。