かわらばん地域版2号 2009年2月
企業をサポートし隊No.2 事業構想で会社を導く
 企業経営と航海
株式会社浜銀総合研究所 コンサルティング部
部長 寺本 明輝(てらもと あきてる)
企業経営は、本田宗一郎氏が、次のように語っているとおり船の舵取りと似ています。
―企業という船にさ 宝である人間を乗せてさ 舵を取るもの 櫓を漕ぐもの 順風満帆 大海原を和気あいあいと 一つの目的に向かう こんな愉快な航海はないと思うよ 本田 宗一郎
船長は、星を読みながら、風や潮の流れの変化を把握し、目的地に向かって、航路、航程を決めなけれなりません。また船員の役割分担を行い、モチベーションを喚起し、乗客や荷物を目的地の港に、安全に効率よく運ぶ責任を担っています。
これら航海を一つの会社に置き換えてみると、船長は社長、船員は社員、乗客あるいは荷物はそれぞれ顧客、製品・サービスとなります。そして、航海の目的地にあたるのが経営ビジョン、航路は経営戦略、そのための航程が経営計画となります。長い航海には、天候の動き、潮の流れなど様々な事象に対応しなければなりませんが、これらは、経営環境と言えるでしょう。また、星にあたるのが企業理念です。何故ならば、海図を失い、漂流しそうになったときに、遠くにあって行き先を導いてくれるものだからです。
このように考えてみると、事業構想をもたない会社(船)は、風や海流の方向によって、どこに進むか分からない状態で航海していることがおわかりいただけるかと思います。
以上のように、事業構想は、大別すると企業理念、経営ビジョン、経営戦略、経営計画で構成されますが、それぞれは次のように定義されます。
企業理念は主にミッションとバリューから構成されます。ミッションとは、使命であり、まさしく命を使うものを意味し、「自社は何のために存在しているのか」といった存在目的・意義となります。バリューとは、「自社はどこに価値をおいているのか」といった経営行動の規範を示した価値基準であり、経営判断の拠りどころとなるものです。
経営ビジョンは、「自社はどの分野で事業を展開するのか」といった事業領域であるドメインをベースとした「自社がどんな企業になろうとしているのか」といった企業の将来像」です。具体的には10年後の経営目標を示したものとなります。
経営戦略は、「ビジョン達成のために、どの市場を対象にして、どの製品・サービスを提供するのか」「そのためには、どのように経営資源の重点配分を行うのか」といった企業の目標実現のため経営の方向付け、ベクトルと言えます。
さらに経営戦略を時間軸と能力軸の視点から「何を、いつまでに、誰が、いくらで、どのように行うのか」といった行動手順を示し、経営活動を規定し具体化したものが経営計画となります。
これら相互に関係づけられた各要素は、上位に位置づけられるものほど抽象度が高いものとなり、実現までに長い時間を要するものとなります。よって、これらを実行性を担保するためには、経営計画の段階で次の点に特に留意する必要があります。
(1)適切な目標設定
目標が適切でない、あるいは明確でないケースでは、企業がどのレベルを目指しているかといったゴールの見えない活動をしていることとなりますので、よりチャレンジブルかつ具体性等のある目標設定が必要となります。
①具体性 …具体的であること
②計測可能性 …計測可能であること
③実現可能性 …チャレンジブルかつ実現可能性のあること
④管理可能性 …当該部門・組織の責任の範囲内で管理可能なこと
⑤期限明確性 …実施時期、達成期限が明確になっていること
(2)実現性のある行動計画
目標を設定しても、実行しなくては何の意味もありません。そのためには、経営課題を緊急度、収益貢献度、実現可能度といった切り口から優先順位をつけ、より具体的な行動計画に落とし込むことが大切です。
①WHAT …(何を テーマ・課題)
②WHY …(なぜ テーマ・課題の選択理由)
③WHO …(誰が 責任者・担当者)
④WHERE …(どこで 実施責任部門)
⑤WHEN …(いつ 実施時期・期限)
⑥HOW …(どのように 具体的施策)