かわらばん地域版30号 2014年5月
証言で綴るS I Cの歴史( 最終回)
 株式会社クリエイト 代表取締役 小俣 晃之
SIC(相模原市)を退職してから14年が経ちました。現在は新潟県長岡市で研磨を中心とした部品加工業、研磨機、切削機、研削機、洗浄機などの装置開発から製造販売、消耗品の販売を商いとしております。
SICは、相模原市経済部(当時)が、「新たな産業を創出するために何ができるのか・・・」ということを真剣に考え、もがいた上に始まったプロジェクトでした。きっかけは16年前。世の中がミレニアムに湧いている頃、技術士の佐藤善治先生から東京大学と慶応大学の先生を紹介いただき、市内企業対象の大学研究室のテーマ発表会を開催しました。いわゆる「産学連携」のマッチングです。また、当時課題となっていた西橋本地域の再開発の目玉として、「産学連携」による新たな産業創出のための「施設づくり」が検討され始めていました。
やはり、建物ありきなのか・・・という疑念がこみ上げる中、血の通った本当に必要不可欠になるしくみが作れないだろうか。そんな思いから、市内企業経営者の皆さんに、1年の間貴重な時間をいただき10回以上「無報酬・手弁当検討会」を実施させていただき、議論だけでなく、大学などの施設や共同開発の現場の見学などをしながら、様々な賛成・反対の意見を受けました。そして、市役所の天下り先ではなく、ビジネスプランを持った民間企業として存在することを意義付け、起業希望者や新たな開発を進める企業にスペースを提供し、会社設立から開発・人材育成・営業促進・経営に関する相談が受けられる、投資もできるなどの、実のあるバックアップをするための株式会社を設立する提案がなされました。市役所内部では、公務員が株式会社をつくり、経営するということに多少の疑念は持たれたものの、産業創生に向け、自ら利益を計上し、地域に貢献する。そして、結果として多数の新たなビジネスを創出する・・・前しか向かず突き進む中で、少しずつ認知を受け、支えを受けながら何もない中で始めた一つのきっかけと多くの人の考えや想いがSIC誕生の流れを創ったのです。
SICが実現できたのは、行政と商工会議所の連携、そして当時の松井社長、河本取締役、権田取締役、松岡取締役を中心とした市内経営者の皆さんの支援と地域振興整備公団の江越取締役のご尽力があったからだと思います。役員の皆さんは、自らの仕事をやりくりして出資金集めに一緒に奔走してくれました。また、創業者支援事業、施設建設、会社運営のため、担当に分かれ、スタッフと一緒に創り上げてくれました。会社のあらゆる課題が、素早く的確に決定・実施される「相模原市と経済界が一つになって進んでいる」実感が、私たちを奮い立たせてくれたことを今でも覚えています。会社設立1年目は、寝ずに働いた1年であり、充実した1年でもありました。
そして、動き始めたSICには、現在友人として親しくしていただいている経営者の先輩たちが立ち寄り、たくさんの叱咤と少しの温かい励ましをいただきました。市役所の仲間も自発的に手伝ってくれました。当時は人に感謝する余裕もありませんでしたが、竣工式を迎えたときは感謝の思いでいっぱいでした。
SICの目的である産業の創出は永遠のテーマであると思います。既存企業の成長支援、製品開発支援は当然のことですが、さらに将来を見据えた投資・教育が大切です。また、コミュニケーションの中心として、人が集う場であり、議論が飛び交う場であって欲しいと思います。SICは、この難しい時代を切り開く突破口であり、既存企業に対しては、時に先を走り、日々は縁の下の力持ちでいてほしい。
OBとしての切なる願いです。