かわらばん

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かわらばん地域版33号 2014年11月

「アジア経済事情と海外進出事例」 タイ編
   JETRO協力企画
―タイ経済―

 2013年のタイの実質GDP成長率は2.9%と前年比で大きく減速した。政府の刺激策の効果が切れたことに加え、家計債務の増加懸念により、金融機関の与信姿勢が厳格化したことで消費が失速した。年終盤に発生した政治の混乱の影響は実体経済に波及し好調であった観光産業を直撃し、公共投資を急減させる結果となった。さらに2014年第1四半期は前年同期比▲0.5%とマイナス成長に陥ったが、第2四半期は0.4%プラス成長に転じ回復に向かいつつある。

 2013年の貿易動向をみると、輸出は前年比0.3%減、輸入は同0. 3 % 増で、貿易収支は201 1年以降3年連続の赤字となった。自動車メーカー各社が国内販売の減少分を輸出に振り替えたため、自動車輸出台数は113万台(前年比9.9%増)と過去最高を更新した。輸出を国・地域別に見ると1位中国、2位米国、3位日本となり中国は4年続けて最大の輸出相手国となった。逆に輸入を国・地域別に見ると1位日本、2位中国、3位アラブ首長国連邦であった。日本からは主に機械・同部品、自動車部品、鉄・鉄鋼などが輸入されている。

 対内直接投資(投資委員会(BOI)認可ベース)は2011年後半にタイで発生した大洪水により被災した企業が工場の再建や機械の入れ替えと自動車産業を中心として生産拡大の動きがあり2012年以降増加の傾向にあったが、2013年投資額は前年より12.8%減少した。しかし、高水準であることに変わりはなく、自動車産業を中心に企業の投資は続いた。また、BOIの投資認可には含まれない金融保険などのサービス業の日本からの大型投資も目立った。

 2013年から政治の混乱が長引く中、2014年5月、軍と警察により構成された国家秩序評議会によりクーデターが宣言された。その後8月30日、プラユット陸軍司令官を首相とする暫定政権が発足している。クーデター後、政情は落ち着きを取り戻しており、遅れていた政府予算の執行や策定、投資の認可の再開などは経済成長に寄与していくものとみられる。

―進出企業とJETRO支援サービス―

 自動車エンブレムや農業機械関連の外装部品等の製造と販売を行っている山本マーク株式会社(東大阪市)は3年前から日系企業の支援を受けて営業を行ってきたが、タイ及びインド向けに小型トラクター樹脂部品の受注があったので本格的な進出を決意し、ジェトロの支援サービスに応募があった。ジェトロの専門家はタイに10年間勤務し会社や工場を設立し運営した経験を活かし山本マークの進出をお手伝いした。2014年3月、タイ資本の合弁パートナーとYAMAMOTO MARK (THAILAND) CO.LTD.を設立した。専門家は合弁パートナーの財務状況を確認し、未整備だった合弁パートナーとの契約書などのドラフトの作成から整備を進めていった。当初予定していた賃貸工場の設立は農業地域で規制されていたため、新たに工場設置場所の物件調査からやり直しとなった。新工場は設備の搬入も終わり、懸念されたクーデターの影響を受けることもなく9月に無事開業を迎えた。
タイの主要経済統計(2013年) 表はPDF版をご覧ください。
タイ(バンコク)の主な投資関連コスト(2013年) 表はPDF版をご覧ください。