かわらばん

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かわらばん地域版34号 2015年1月

株式会社永田農園
   ゆたかな農ある大地を未来に届けるために
 冷たく澄み切った空気の中、見事な富士山に見守られた藤沢の台地で野菜苗や花苗の生産をしている株式会社永田農園の永田誠社長を訪ねました。

 同社は1977年、18歳で就農した永田さんが2010年に法人化し、法人として認定農業者の認定を受けてから5年目を迎えている。露地野菜を家族で作ってきた時代から多くの従業員を抱える農業法人になるまでの33年間は、農業を取り巻く環境が大きく変化する中、生き残りを賭け新しいことに挑戦し続けた33年間だったに違いない。

 高校生の時に父親を亡くした永田さんは、あえて農業の道しか選択しなかったと言います。高校卒業と同時に父親が残した永田農園を引き継ぎ、7年後の1984年には生活クラブ生協等と露地野菜の契約栽培を始め、翌年には将来の地域農業を担う中核的農業経営者として神奈川県農業経営士に認定されている。

 長年にわたりこの藤沢の地でほうれん草やレタス等の葉もの野菜を作ってきたが、露地野菜栽培では雨や雪などで作業が遅れたり、気候に左右されて収穫にも大きな波がある。また、同じ関東でも、地価や人件費が安い茨城や千葉で生産された野菜も都心に近い藤沢で生産された野菜も同じ値で取引される。これでは勝ち目が無い。

 一方、施設の苗栽培には、これらのリスクが少ない。また、商品の企画次第でより付加価値の高い商品をつくることもできる。そんなことから葉もの野菜から野菜苗の生産に移行していった。多額の設備投資が必要だったが、ハウスを新設し野菜苗に加え花苗の栽培も始めていった。この道がダメなら他の道も無理だと自分に言い聞かせながら、永田さんが就農してから20年、38歳での決断だった。

 苗栽 培に移 行し始めた次の年からトマトの水 耕栽 培施 設を新 設し、調 理 用トマトの栽 培 も始めた。10年 前からは ホームセンターの大手「株 式会社島忠」などとの取引も始まり育 苗ハウスを年々増設している。

 そして、2010年、株式会社に法人化し、翌年、藤沢市から農業経営の目標に向けて自ら創意工夫し経営改善を進めようとする農業者に与えられる「認定農業者」に認定されている。現在は年間94品目568種類にも及ぶ商品の企画や販売計画を作成し、一年を通して生産と出荷で忙しい日々を送っている。

 3.2ヘクタール(内ハウス面積は1.2ヘクタール)の永田農園には、20代~40代が中心の40名のスタッフが従事している。若者の就農希望者は少なくないと言う。採用された若者には、社員になってからは早くから多くの仕事を任せる。栽培経験の多い社員と新人との組み合わせで、各ハウスを1~2名に任せてパートや海外からの実習生とともに協力して仕事を進めている。

 また、2年前から藤沢市の支援を得て体験農園「フィールドゆう」を開園し、現在40区画(30㎡/1区画)全てが利用されている。苗栽培には利用しづらい農地を有効利用し、地域に密着し地域との交流を図っている。一度荒れてしまった農地を元に戻すには長い時間がかかる。この事業は農地を守る為でもある。この体験農園は、元農協職員のベテランの協力も得て苗と管理指導がセットされ大人気だそうだ。空きも出ないが利用が土日に集中する為、なかなか区画数を増やせないのが残念とのこと。そしてまた、おやじの地域活動グループ「じゃおクラブ」との農園活動も20年もつづいている。永田農園が、じゃおクラブ約40名の農園活動を支援する代わりに、じゃおクラブが永田農園の繁忙期に農作業を手伝っている。

 永田さんは、地域の米生産者、畜産農家などと連携し、もみ殻・豚 糞・剪定枝などを原料に自家製堆肥を作り良質な栽培用培土での苗 栽 培にも取り組み、地域循環型の環境にやさしい農 業を目指している。ハウス栽培は毎年設備投資が必要で利益を上げるのは簡単ではないが、この豊かな農ある大地を未来に届ける為に、これからも様々なことにチャレンジし続けて行きたいと、5年先10年先を見つめている。

株式会社永田農園
代表取締役 永田 誠(ながた まこと)
所在地 :神奈川県藤沢市打戻2904
従業員数:40名 資本金:950万円
売上高 :2億8500万円(平成25年度実績)
事業内容 :ポット苗生産(春秋野菜苗、春夏秋冬花苗)
     水耕トマト栽培 体験農園

URL:http://www.nagata-farm.co.jp/

スタッフと共に -前列中央 永田誠社長-
永田農園は見事な富士山に見守られている