かわらばん

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かわらばん地域版35号 2015年3月

権田金属工業株式会社
   「良品共栄」マグネシウム合金板を世界に
 黄銅棒、銅棒、銅ブスバー、メッキ用銅アノードなどの銅製品を製造する権田金属工業株式会社の権田源太郎社長を相模原市中央区宮下の本社工場に訪ねました。

 1918年(大正7年) に権田社長の祖父権田藤三郎氏が横浜市西区で権田伸銅所を創業する。創業当時はもっぱら機械部品や船舶で使う黄銅棒を製造していた。高い品質が評価され海軍との取引が始まり戦時中は海軍からの大量の注文に追われたそうだ。太平洋戦争が終わってからは海軍という大口顧客を失い、戦後の混乱期でもあり大変苦労されたそうだ。1947年に権田金属工業株式会社に社名を変更。1963年には本社・製品工場を横浜から現在の地に移転している。

 権田さんは1973年に大学を卒業後、大手商社のトーメンに入社し、大阪で中近東向けに化学繊維の輸出を担当。入社直後、中東戦争に端を発したオイルショックが起き、原油価格が急騰し、商品の値決めが半月もできないなど商社機能がマヒしてしまったことを鮮明に覚えているという。その後、東京でVANジャケット向けなどの紳士服地の販売、オーストラリア向けの非鉄の輸出などを担当した後、1978年に同社を退職し、権田金属工業へ入社する。営業担当の取締役、常務取締役を経て1983年に33歳で社長に就任する。入社後、業績は順調だったが同社の主力製品である銅製品の生産量は平成3年をピークにリーマンショッックで大きく落ち込み、その後も少しずつ回復しているが製造業の海外展開が進む国内市場でこれ以上の成長は望めないという。

 そんな中、銅製品の製造に関するアドバイスをいただいていた東海大学工学部の吉田先生から大阪工業大学の羽賀先生を紹介されマグネシウムと出会うことになる。

 マグネシウムは実用金属としては一番軽く、しかも強度があるが加工が難しく、量産するには厄介な素材とされてきた。当社の研究開発は2002年から始まり、全社挙げての研究開発が実り、2007年に高速双ロール鋳造法(※)であるゴンダ・ツインロール・キャスティング・システム(GTRC)を開発。この技術を使ってプレス性がよく、強度もあり、表面処理性もよいことから様々な製品への展開が期待できるマグネシウム合金AZ61の量産化に成功している。

 また、カルシウムを添加して難燃性を高めた「難燃性マグネシウム薄板」の生産を開 始し、800度以上でも燃焼しないという特徴を生かし、建材への応用が本格化しつつある。まず、具体化しているのは壁と吊天井をつなぐエキスパンションジョイントで平 成25年に国土交通省の不燃認定、翌年には(表面からつづく)強度の圧縮試験に合格し、都内の小学校体育館への納入も2015年1月に行った。スタッフが日本マグネシウム協会、日本機械学会、日本塑性加工学会などの機関から賞を受賞するなどマグネシウムの研究開発を支える人材も順調に育っているという。

 マグネシウム合金板の普及に向けた権田金属工業の挑戦はまだまだ続く。それはまさに「良品共栄」という経営理念の実現でもあるのだろう。是非とも相模原の地からマグネシウムで世界をリードするリーディングカンパニーが生まれることを願っている。

※高速双ロール鋳造技術とは溶融金属から金属薄板を直接鋳造する技術で、従来の薄板製造方法と比較して工程数を大幅に減らすことができる。特に権田金属工業が開発したGTRCは双ロール鋳造の高速化を実現し、生産コストを半減させた。

権田金属工業株式会社
代表取締役 権田 源太郎(ごんだ げんたろう)
所在地 :相模原市中央区宮下1丁目1番16号
従業員数:80名 資本金:6,000万円
売上高 :37億円(2014年9月期)
事業内容 :銅ブスバー、銅・黄銅丸棒、メッキ用銅アノード、型打
鍛造品、銅・アルミニウム・ステンレスリング、銅コイ
ル材、マグネシウム合金薄板(AZ61) の製造・販売
URL:http://gondametal.co.jp/
権田源太郎社長 (銅像は創業者 権田藤三郎氏)