かわらばん

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かわらばん地域版41号 2016年3月

有限会社 光製作所
   会社の成長は お客様を喜ばすこと
 プレス加工、組立、金型設計・製作の有限会社光製作所の丸山裕司社長を綾瀬市の綾瀬工業団地内にある工場に訪ねました。丸山社長は1962年に埼玉県所沢市で生れ、横浜市鶴見にある横浜商科大学に進学。小さな頃から働くことが好きで、高校生の頃からアルバイトに精を出し、どんな職場でも一番のアルバイトだったそうだ。

 大学在学中の20才の時、大手外食チェーンの創業時に学生アルバイトとして働き始める。仕事が好きで常に一番を目指す丸山さんは学生の枠を超えて懸命に働き、そんな仕事ぶりが買われ、大学卒業と同時に同社に入社する。新店オープニングスタッフとして全国を駆け回り、年間に10店舗のペースで新店をオープンさせていった。現地調査、スタッフの募集、採用、トレーニングを1ヶ月、開店から1ヶ月間は採用したスタッフをサポートしながら店頭に立つ。オープニングスタッフがいなくなった1ヶ月後は新人のスタッフだけでやっていけるようにする。そこで学んだことは「男女、年齢、国籍を問わず、人に認められる事で、誰でもが成長できる」これが会社成長の源泉なのだということ。その後、本社で上場準備にも携わるなど創業メンバーの一人として同社の急成長を支えた。

 そして10年目で辞め、義父が経営する光製作所に入社する。初めの仕事はプレス部品の最終検査、次にワイヤーマシーン加工、3か月後には納品で顧客回りを始め、少しずつお客さんから注文を取るようになる。当時は忙しかったので丸山さん自ら週末、プレス機を動かし、納期に間に合わせたことも度々あったそうだ。また、自社では経験の無い難しい仕事を取ってくることもあり、そんな時はあの手この手で現場の人たちの気持ちを刺激しながらやり遂げてもらったそうだ。前職でスタッフの資質を見極め、褒めて、育ててきた経験が生かされたのだろう。

 仕事の8割を占めていた主要顧客の工場が海外移転したことにより仕事が激減し、苦しい時を迎えた。それを契機に社長就任を打診され、引き受けることになる。丸山社長40才の時だ。スタッフの大半が自分を支持してくれたことも心強かったそうだ。

 社長就任と同時に「製造業はサービス業だ」というビジョンを掲げ、社内に新しい風を吹きいれた。また、大きく変えたことが3つある。生産、原価、在庫などの計数管理をパソコンで始めたこと。2つ目はリスクの高そうな新しい仕事をどんどん取りに行ったこと。それは、製造業の経験が無いため、怖さを知らなかったこととモノづくりはどんどん「カタチ」になって進化していく事で「できる」感覚に変わるのが楽しく、前向きだったからである。その結果、主要顧客1社に大きく依存していた状態から1社あたりの占有率を1割以下にした。3つ目は大量のプレス加工の仕事だけを追わず、少ロット多品種の仕事やアッセンブリーの仕事の割合を大きくしたこと。アッセンブリーまで手掛けることで全体の仕事量が増えると考えた。アッセンブリーを手掛けることで金属部品の加工を全部受注できる可能性が高まる。そして、それは、単に仕事量が増えることに止まらない。自社でアッセンブリーするから部品に必要とされる精度や勘所が分かるわけで、部品の形状や加工方法についてもいろいろ提案ができ、最終的には良いものを安く作れることになる。主要顧客のA社は工場を海外に移転させたため、国内にものづくりの機能が無く、光製作所は新製品開発をサポートする試作工場の役割も担うようになっている。

 また、今までは顧客から図面を渡された部品を製造するだけだったので何の製品になるのかわからなかったが、「これは俺たちが作った製品だ」といった達成感ややりがいをスタッフが感じるようなったことも大きい。今では大手メーカーから部品製造を伴わないアッセンブリーだけを受注することもあるそうだ。

 スタッフの年齢は18才から81才まで。男性社員が15名。女性パートが約50名。女性たちのほとんどが外国人でブラジル、タイ、中国、ベトナム、ペルーからやってきた人たち。彼女たちはハングリーでロイヤリティーも高い。子どもや祖国にいる両親のために働くと決心した女性は強く、頼もしい存在だと丸山さんはいう。1社依存から脱却したこと、プレス加工だけではなくアッセンブリーを取り込んだこと、女性パートの積極的な活用でフレキシブルな生産体制を作ったこと、そんな取り込みが実を結び前社長から引き継ぐときと比べ売上は3倍に届く勢いだ。

 最後に仕事の極意は何ですかと聞いてみた。「お客様を喜ばすこと」「お客様を喜ばすことをやり続ければ仕事と売上げはついてくる」と丸山さんはいう。お客様はもちろんのこと従業員、仕入れ先、取引先など全ての関係者を指しているのだろう。高校生アルバイト時代、外食産業時代、そして光製作所での経験から丸山さんが導いた結論なのだろう。これはサービス業、製造業の枠を超えた一つの真理ではないかと思う。そんな異業種出身社長の次の一手が楽しみだ。

有限会社 光製作所
代表取締役社長 丸山 裕司(まるやま ゆうじ)
所在地 :神奈川県綾瀬氏深谷上8-21-17(綾瀬工業団地内)
従業員数:60名 売上高:8億円
事業内容:プレス加工・組立、金型設計・製作、冶工具製作
丸山裕司社長