かわらばん

かわらばん

    
かわらばん地域版44号 2016年7月

コーワテック株式会社
   創造技術で社会に貢献する
 水陸両用バス、電源車などの特殊車両を製造するコーワテック株式会社の小栗代表取締役社長を神奈川県寒川町にある湘南事業所に訪ねました。同社の前身は小栗社長の父親が経営していた興和工業でその当時からふとん乾燥車、TV中継車、霊柩車などの特殊車両を製造していたそうだ。

 小栗社長は東海大学海洋学部海洋工学科と大学院で学び「漂砂の数値シミュレーション」などに取組んだが、研究職は自分には向いていないと感じていたし、経営の勉強もしたかったので日本能率協会に入社する。3年位勤めた後、父親の会社に入社するが父親と意見が合わず1年足らずで退職し東海大学系のシンクタンクに入ることになる。議員立法による科学技術基本法の制定に奔走するなど充実したシンクタンク時代を送っている。そして、バブル崩壊の影響を受け経営難に陥った父親の会社を事業譲渡という形で引き継ぎコーワテック株式会社を2001年に設立する。バブル崩壊の厳しい時代、会社設立にあたっては大学の大先輩が支援を申し出てくれたという。
 コーワテックはいろいろな特殊車両を作っている。電源車、照明車、ガスパイプライン工事車、報道中継車、電波測定車、ゴルフツアーサポートカー、水陸両用バス、移動販売車、競走馬運搬車、レントゲン車、消防車、地震体験車、レッカー車など。まだまだいっぱいあります。社会インフラ、防災・安全、医療、商業・サービスとカバーする分野はとても広く、出荷台数は年間600台を超える。ある分野に特化したメーカーはいくつもあるがこれだけ多様で大量な特殊車両を製造できるのは日本では同社だけだという。

 2011年3月の福島第一原子力発電所事故では電力会社が持つ全国の電源車が福島に集められたため、その後、電源車が大量発注され、半年ぐらいは夜も昼なく電源車の製造に追われたそうだ。また、水陸両用バスを日本で初めて作ったのもコーワテックで
ハウステンボス、諏訪湖、琵琶湖、湯西川、大阪市内などで活躍している。

 同社の強みは部品加工、板金、溶接、組立、塗装、電装、車検までを一貫して自社でやれる「ものづくり力」をベースにした総合力にある。だから、どんな注文にも臨機応変に対応できる。多様な特殊車両を製造できる力の源泉はそこにあるのだろう。ものづくり力を高め継承するため社内に板金学校を開設し、ハンマーやハサミの使い方などの基礎からベンディングマシンなどの加工機の操作までを一貫して教えている。新人は必ず3か月間この学校で学ぶ。今では評判を呼び、板金学校には他社からの受講生も受け入れている。

 小栗社長は「会社は社会の公器であり、社会の課題を解決し、人を幸せにするためのものだ」と考えている。今までも社会や人が必要とするいろいろな特殊車両を作ってきた。そして、今、力を入れているのが建機用無線操作ロボット「アクティブロボSAM」だ。「アクティブロボSAM」は空気圧で収縮する人工筋肉を使って建機を遠隔で操作するロボットシステム。既存のショベルカーに後付するロボットシステムなのでどんなメーカーのどんな機種でも使え、極めて汎用性が高い。福島原発事故、雲仙普賢岳の噴火災害、豪雨による土砂災害など自然災害や大規模事故が多発する現在、人が近寄れない過酷な現場での活躍が期待される。

 「SAM」は平成25年から開発に着手し、27年4月に製品化に成功している。驚異的な開発スピードといっていいだろう。さがみロボット産業特区の重点プロジェクトとして実証実験の支援を受けるなど産業特区の目玉事業として大きな期待を集めている。既に10台余りの受注が入っている。危険な潜水業務への展開もありそうだし、人口知能を搭載すればまだまだ用途や活躍の場は広がる。今後は世界のマーケットも視野に入ってくるだろう。

 社会の課題を解決し、人を幸せにするために邁進する小栗社長とコーワテックのスタッフの皆様の今後の活躍に期待したい。

コーワテック株式会社
代表取締役 小栗 裕治(おぐり ゆうじ)
所在地 :湘南事業所 高座郡寒川町一之宮5-18-18
     本社 東京都港区西新橋1-9-1 アコールビル3F
従業員数:51名 売上高:10億円
事業内容:各種の特殊車の設計・製造・販売、自動車の点検・整備・修理・改造、各種の部品加工・製造・販売、建機用無線遠隔操縦ロボットの開発・製造・販売
URL:http://www.kowatech.co.jp/
小栗祐治社長
「アクティブロボSAM」