建設機械部品・自動車部品の金属プレス製品製造加工を主業とする株式会社栄和産業の伊藤正貴社長を綾瀬市吉岡東の本社工場に訪ねました。
同社は昭和４９年１１月に伊藤社長の実父である伊藤正士氏（平成２９年３月に会長職をご勇退）が横浜市戸塚区で創業。昭和５６年１０月に本社を綾瀬市深谷に移し、現在では綾瀬市吉岡東の本社工場をはじめ市内に７工場と静岡県内に２工場を保有している。近年の受注構成は建設機械関連部品７０％、自動車関連部品３０％であり、ショベルカーのエンジンフードや大型バスのパネルフロントルーフなどを中心に二千種余りのパーツを手掛けるなど取扱製品は幅広い。
一般的にプレス加工には「張出し成形」や「伸びフランジ成形」・「曲げ成形」など様々な工法があるが、プレス加工の中でもっとも難しいとされるのが「絞り加工」である。一枚の金属の薄板から円筒・角筒・円すいなどさまざまな形状の底付容器を作る加工法であるが、金型・機械・加工条件と加工技術などのバランスがうまくかみ合ってこそ、しわやひずみ・割れのない絞り加工が出来上がる。また、その深さが深くなればなるほど製造難易度は増すことになるが、熟練した社員のハンドワーク（板金技術）によって、難しい深絞り加工にも柔軟に対応できる。こうした高度な技術力と納期厳守の徹底が取引先からの信頼と様々な関連部品の受注に繋がっていると伊藤社長は語る。
小学生時代から自社工場に出入りすることが多かった伊藤社長が同社に入社した時代は折しもバブル経済の真っただ中、猫の手も借りたいくらい忙しい時期であった。入社当時は朝から翌朝近くまで働くことが多く、家には風呂に入りに帰るといった日々が続いた。一時は休みなく働くことに高揚感さえ感じる“ランナーズハイ”の感覚も味わったそうだ。
その後、日本経済は一変して長期的な景気低迷時代を迎える。さらに世界を揺るがしたリーマンショックは同社の存亡の危機となるような状況だったが、何とか経営危機を乗り越えることができた。その時の厳しい状況は今でも忘れられないと伊藤社長は当時を振り返る。
まさにバブル期と景気低迷期を経験してきた伊藤社長が先代から代表取締役を引き継いだのは平成２６年４月。社員とのコミュニケーションを非常に大事にし、慰安旅行をはじめボーリング大会や新入社員歓迎ＢＢＱなどの社内イベントを積極的に実施している。また、伊藤社長が監督を務める社内野球部は綾瀬市主催の野球大会（Ｂ）で２連覇するなどの実力派チームである。
そんな伊藤社長は、障碍者が「国から支援を受ける立場から納税者へ」をスローガンに障碍者雇用への取り組みも行っている。特に障碍者の職場実習に力を入れ、現在、県内６校の養護学校から実習生を受け入れ、製造部門のみならず様々な部署に配属している。
「障碍者雇用については多くの様々な課題があることも事実だが、前向きに取り組むことで解決できることも多い。当初は障碍者の法定雇用率をクリアすればいいと思っていたが、一緒に働いてみると、みんな素直な子ばかりで一生懸命に仕事をしている。実習生が当社で働くことで喜びや幸せを感じてくれることが当社にとっても大きな喜びとなっている」と伊藤社長は話す。
同社では、こうした実習生の受け入れから本採用に至るケースも増えつつあり、現在７名の障碍者の方々と一緒に働いている。
しかし、こうした取り組みを行うには先ず本業がしっかりしていなければいけない。ジャンプするのではなく、しっかりと地に根を張って「背伸びするくらいの踏ん張り」でチャレンジしていると謙虚ながらも意欲的だ。今後も綾瀬市行政との連携をさらに強め、「共に生きる」ために、一社でも多くの企業が参画し、一人でも多くの障碍者雇用の促進に繋がればと他の企業にも職場実習生受け入れの呼びかけをしている。
海外企業の技術力も着実に向上している中、2020年開催予定のオリパラ後の景気の落ち込みを想定し、難しくて面倒なものであっても簡単につくりあげることが出来る、そんな社内体制を構築することが今後の課題であると伊藤社長は気を引き締める。
充実した工場や設備と長年にわたり培われた高い技術力に加え、多彩な人財がいる。そして何よりも社員の“個性”を大切にするという企業風土が構築されている栄和産業は、まさに「誠心・誠意・誠実」で社会に貢献している創造性豊かな企業である。
株式会社栄和産業
代表取締役 伊藤 正貴（いとう まさたか）
所在地：綾瀬市吉岡東4-15-5
従業員数：133名 売上高：9億円 (2017年 4月期)
事業内容：自動車新車部品試作鈑金及び建設機器部品試作鈑金、自動車部品加工、建設機器部品加工、各種溶接、各種ベンダー曲げ、三次元レーザー加工、二次元レーザー加工、各種型製作
URL:
http://www.eiwa-sangyou.co.jp/
伊藤 正貴社長 