中小企業に必要な「広報」
今回から中小企業にとっての「広報」をテーマに連載(3回)してまいります。これまで企業取材を専門にしてきた経験から、記者として感じた中小企業にとっての広報の必要性についてお伝えします。
さて、取材で回っていても「売れない」「人が集まらない」といった声をよく聞きます。しかし、技術や製品が悪いから売れないのではなく、また、会社に魅力がないから採用できないのではないと思います。単に「売るための努力」や「知ってもらうための努力」をしていないだけだと思います。例えば、ホームページ(HP)やチラシを挙げてみます。HPの更新が何年間もストップしていたり、新製品のチラシも購買意欲を刺激しなかったりする企業が少なくありません。もし自分が採用に応募する立場で自社HPを見たら「この会社に入りたい」と思うでしょうか?
確かに、以前はモノを作れば自然と売れる時代だったと思います。人材もたくさんいました。しかし今は違います。あの「失われた20年」で、大手企業は安く売る努力に奔走しました。そして、現在はモノがあり余る時代となりました。こうした中で「良いモノを出せば売れる」「待っていれば人が集まる」という考えは、もはや通用しない時代であると思います。ある大手レストランチェーンの社長は「おいしい料理が売れるのではなく、売れた料理がおいしいのだ」と言ったそうです。このことは中小・小規模企業にも当てはまります。「売れるため」あるいは「獲るため」にどんな努力をするかが重要だと思います。「広報」もその一つです。
「広報」と「宣伝」は別物
では、そもそも「広報」とは何でしょうか? まず強調したいのは「広報」と「宣伝」はまったく別物だということです。実際、大手企業では「広報部」と「宣伝部」は別部門になっています。それぞれで役割が違うからです。宣伝とは、予算に基づいて、テレビ・ラジオCMや新聞広告、チラシといった広告物を制作し、自社が意図的に伝えたい情報を普及させることだといえます。それに対し、広報とは「自社や製品のことを世に問うこと」であると考えます。広報と宣伝―。「売るための努力」を実践するには、どちらも大切だと思いますが、広報の場合、あすからでも着手できるというメリットがあります。次回は具体的な広報活動についてお伝えします。
〇 千葉 龍太 〇
かながわ経済新聞代表・編集長、相模原商工会議所編集委員
都内テレビ局に1年、大手産業紙に8年、一般紙に5年ほど在籍した後、新聞業界のベンチャー企業「かながわ経済新聞」を2013年7月に設立。一般の新聞ではあまり載ることがない、県内の中小・小規模企業にスポットを当て、月1回、紙面で情報発信している。年間で累計500社ほどの県内企業を取材している。
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