かわらばん

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かわらばん地域版65号 2020年1月

日本電子工業株式会社
   社員の安全を第一に 安心して働ける安定した企業へ
 自動車やその関連部品、建設機械、工作機械などの素材の強度や耐久性向上のために行う「熱処理」を主事業とする日本電子工業株式会社の竹内博次社長を相模原市中央区の本社に訪ねました。

 同社は、1957年に電子顕微鏡をはじめとする理科学計測機器のトップメーカーである日本電子株式会社(東証一部上場)の高周波焼入課から分離独立し設立された。日本電子株式会社が高周波焼入れ装置の製造販売のために社内で研究開発や実験を行い、その試作や受託加工を行う会社として設立されたのがはじまりだ。

 事業内容は、①高周波焼入れ、プラズマ(イオン)窒化、セラミックコーティング及びDLC(ダイヤモンドライクカーボン)の受託加工②高周波誘導加熱装置、プラズマ応用装置(イオン窒化・ラジカル窒化、プラズマCVD、直流パルス電源)の製造・販売だ。現在、相模原市中央区に本社及び相模原工場を置き、名古屋工場、大阪工場、豊中工場を有する。それ以外にも神奈川県、埼玉県、広島県、福岡県に関連会社、東南アジアを中心とした海外の拠点としてタイにも現地法人を設けている。2014年には相模原工場の隣接地に技術開発センターを開設し、各種専門機関や自動車関連企業との共同による研究開発やアルミやチタンといった非鉄金属材料の研究開発にも力を注いでいる。

 同社は、事業展開していくうえで高周波焼入れ以外の事業を模索する中、ドイツで発明された新時代の熱処理として、地球環境に負荷の少ない技術とされているプラズマ窒化(イオン窒化)装置の研究開発に着手。1973年には国産第一号機を完成、国内で初めてイオン窒化装置の製造及び受託加工を開始した。以後、ラジカル窒化装置の開発・製造・販売及び受託加工、セラミックコーティングの受託加工、P-CVD法によるNEO Cプロセスの実用化などに取り組んできた。同社では工業製品のみならず、医療機器、航空宇宙産業、スポーツ用品などにも事業領域の幅を広げている。一般的に窒化とは、鋼材の表面に窒素を浸透拡散させることによって表面付近を硬化させ、耐摩耗性や疲労強度などの機械的性質を改善させる表面硬化法のことだ。窒素、水素ガスなどを使用して鉄と窒素の化合物を生成させ、製品表面から0.01~0. 3㎜程度の深さを硬化することができる。処理温度が400℃~570℃程度と比較的低い温度を使用するため寸法の変化を小さくすることができる。窒化処理の目的としては、耐摩耗性、耐疲労性、耐腐食性、耐熱性などの向上であり、処理温度、時間、ガスの種類によりいろいろな特性を得ることができる。さらに窒素という環境に害のない気体を用いた加工手法であり、環境面や安全面への影響も少なく、非常に優れた処理手法だ。同社が得意とする独自のプラズマ(イオン)窒化法は真空容器に13.3Pa~1.3kPaの窒素混合ガスを導入し炉体を陽極、被処理物を陰極とし数百ボルトの直流電圧を印加すると、グロー放電を生じネオンサインのような柔らかい光が被処理物を覆う。この際、イオン化されたガスの成分は高速に加速され、被処理物表面に衝突しこれを加熱する。同時にスパッタリング作用等により窒化が進行する。このようにプラズマ(イオン)窒化法はアンモニアガスや塩浴を用いた従来の窒化法とは全く異なる画期的な処理方法として、自動車部品をはじめとした各種機械部品、精密部品、射出成形機部品、各種金型等に適用されている。高周波焼入れが素材の組織を変化させて硬化させる物理的方法であるのに対し、プラズマ(イオン)窒化はグロー放電を利用して窒化物層を生成し、表面を硬化させる化学的方法といえる。また、同社が行う熱処理は、非常に精密なものであり、表面から1.0ミクロン~2.0ミクロン程度だけに加工を施すことも行われている。また小さなものではわずか数グラムの部品から大きなものでは20トン以上もある掘削機のようなものまでを手掛けている。このように、創業以来培ってきた独自の熱処理技術、プラズマ技術は同社の大きな強みだ。

 そんな同社を率いる竹内社長は、三重県四日市市で生まれ、高校までを同市で過ごした。1973年に関西大学工学部金属工学科へ進学するも学生運動の真っただ中にあり、なかなか大学に行ける状況ではなかったという。もっぱら生活費を稼ぐため、喫茶店のウエイターや郵便局の仕分け係り、甲子園球場の売店員など様々なアルバイトをしていたそうだ。大学卒業後の1977年に日本電子工業へ入社、府中工場の装置製造部門で技術開発を担当した。入社当時からプラズマ(イオン)窒化の技術開発に従事してきた竹内社長は、さらなる専門知識を得るため、40代半ばで茨城大学大学院理工学研究科に進学。博士後期課程物質科学専攻を修了し「鋼の外熱および中空陰極放電式プラズマ窒化と浸炭法の研究」で工学博士号を取得する。その後の2012年、前任者が急逝されたため、すでに関連会社(エヌ・デイ・ケー加工センター株式会社)の代表取締役であった竹内社長が同社社長を兼務することになった。そんな竹内社長は、研究開発に精力的に取り組むとともに、一貫して「現場主義」をとる。社長就任後、すべての現場(工場)へ毎月1回必ず足を運ぶ。現場の状況確認のほか、現場から上がってくる声を大事にしている。そして何よりも「社員の安全を第一とした安心して働ける安定した企業にしていきたい」と熱く語る。熱処理技術で産業界の発展に貢献するリーディングカンパニーとして、低公害、省資源、省エネなどのキーワードを軸に地球環境問題にも取り組んでいる日本電子工業の“研究開発”に終わりはなさそうだ。

日本電子工業株式会社
代表取締役:竹内 博次(たけうち ひろつぐ)
所在地:神奈川県相模原市中央区中央3-14-7
従業員数:200 名
資本金:1 億1,950 万円
事業内容: 金属製品の表面改質加工(高周波焼入れ、プラズマ窒化、セ
ラミックコーティング)とその装置の製造および販売
URL: http://www.ndkinc.co.jp/
竹内社長
プラズマ窒化法の真空容器
グロー放電の様子