かわらばん

かわらばん

    
かわらばん地域版74号 2021年9月

有限会社山内エンジニアリング
   お客様への貢献 社会への貢献 それは“ものづくりの可能性の追求”
 金属プレス加工用金型の設計・製作、技術シーズの発掘によるVA・VE提案を主な事業とする有限会社山内エンジニアリングの代表取締役である山内章社長を相模原市中央区田名の本社工場に訪ねました。

 山内章社長は、常磐炭田があった福島県内郷市(現いわき市)の出身。いわき湯本温泉やスパリゾートハワイアンズ(旧名:常磐ハワイアンセンター)が有名で、温暖な気候と自然にあふれた国内でも数少ない風光明媚なところだ。少年時代は地元の小中学校に通い、その後、隣接する旧湯本町の高校に進学。高校3年生当時、常磐ハワイアンセンターの開業記念イベントで、同級生と共にエレキバンドのベース担当として、ベンチャーズの楽曲を演奏。ちょうど、国内でもブルーコメッツなどのグループサウンズが流行っていた頃で、今でも懐かしい思い出として残っているそうだ。

 高校卒業後、アイダエンジニアリング株式会社に就職、入社3年目からは金型関連部署に配属された。20代の頃は、各種製品の持ち込みと設置調整をするスーパーバイザーとして、ソ連、ポーランド、イギリス、中国、韓国、台湾などへ単身で出張することが多かった。短くて2週間、長くて半年間にわたる出張もたびたびあったとのこと。特に思い出に残っているのは、真冬の1月に出張したウクライナ。マイナス30℃となる現地は、外出禁止令が出るほど寒かったそうだ。

 アイダエンジニアリングに勤務した27年間の殆どを金型関連部署で過ごした山内社長は、金型に関する様々な知識と技術を習得すると共に、とことん金型に魅了されてしまったのだという。金型の魅力は、なんといっても結果がすぐに分かること。もともと金型は失敗ありきで、なかなか上手くいかない。常に創意工夫とチャレンジ精神をもって課題を解決し、高品質なものに創り上げていく。そこがとても面白く楽しいのだと山内社長。

 創業のきっかけは、バブル経済崩壊後の1990年代半ば、勤務会社の方針が変更されたことと金型を通じて“ものづくりの可能性の追求”に挑みたいという強い思いがタイミングよく重なったこと。4年間の個人事業主時代を経て、1999年10月に法人設立。個人時代に知り合った大西専務との二人三脚で同社は始まった。当初は設備も人手もなく設計のみを受注しながら、地道な努力で取引先を増やしてきた。

 創業以来、新しいテーマに向かった金型づくりに邁進し、マグネシウム成形、ステンレス成形等の難加工材の成形、減肉、増肉成形、超精密絞り成形、さらには高速トランスファによる絞り成形等に挑戦し続けてきた。海外向け金型製作にも数多くの実績を持ち、輸出手続きから現地出張、量産稼働確認までに対応している。また、見積依頼も3日以内に回答するなど少数精鋭体制でスピーディーな対応にも定評があり、試作(工法開発)から量産型の加工工程の見極め、量産設備の選定、量産金型の製作、稼働確認までを一貫して請け負うことができることも同社の大きな特徴だ。

 そんな同社は、平成28年度:戦略的基盤技術高度化支援事業(略称:サポイン)では、従来、切削加工していた内径凹凸加工の画期的新工法となる「円筒絞り部品への内径加工を汎用プレス機のみで完結できる金型の開発」で採択された。現在では、2度目となる令和元年度のサポインで採択された「圧倒的な高品質・低価格を実現するプレス複合深絞り技術を具現化した汎用プレス機用金型の開発」に取り組んでいる。2030年におけるEV/ PHV用リチウムイオン電池の需要増加予測を見据えて、アルミ角深絞りケース<複合成形工法>を確立した金型に汎用性を付加し具現化することで、大手メーカーや海外勢を凌駕するQCD(品質・コスト・納期)を武器にした強い中小サプライヤーの創出に寄与することを目的にしている。主にプレス工程数、製品精度、加工速度、材料歩留まりの改善により製品コスト低減を目指している。こうしたチャレンジは、郡司営業部長が中心となって推し進めており、企業力アップをはじめ若手社員の成長やモチベーションアップにもつながっている。

 昨今、自動車業界は大きな変革期を迎えている。今後、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の技術開発はますます加速していく。厳しい金型業界の中で勝ち残っていくためにも技術向上は欠かせない。そして、技術向上の秘訣は「根気強さとあきらめないこと」だと山内社長。半世紀近くもの長い間、金型に携わってきた経験から滲み出る思いだ。今後の課題は人材確保。課題解決のためにも若い人たちに仕事のやりがいをもって働いてもらえるような会社にしていくことが大事だと語る。そんな山内社長の楽しみは健康管理を兼ねたゴルフと赤ワイン、そして早朝の散歩だそうだ。

 金型をこよなく愛する山内社長は、社員のみなさんとともに、さらなる低価格化、短納期化、高精度化の実現のために、これからも“ものづくりの可能性の追求”に挑み続けていく。これこそが、お客様への貢献、社会への貢献となり、自らを研鑽する道であると信じ邁進していく山内エンジニアリングの挑戦に終わりはなさそうだ。

代表取締役: 山内 章(やまうち あきら)
所 在 地: 神奈川県相模原市中央区田名2327-2
従業員数:  8名
資 本 金: 500万円
事業内容:  金型製作・プレス加工試作・自動化コーディネート・コンサルタント
URL: http://yama-eng.com/
山内社長