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かわらばん地域版75号 2021年11月

特別連載「社会保険労務士の現場から」(全3回)
   ー第3回 新型コロナウイルス感染症の収束後についてー                   鈴木道士行政書士・社会保険労務士事務所 代表 鈴木 道士
ワクチン接種の効果が出ているのか、収束しているように見える新型コロナウイルスですが、最終回は、コロナ収束後のこと、社会保険労務士と雇用調整助成金についてお話ししたいと思います。

◇新型コロナウイルス感染症の収束後について◇
 10月に入ってから、ワクチン接種の効果が出ているのか、コロナの感染者数が減ってきているように見えます。そこで、そろそろ考えておかなければならないのは、コロナ収束後についてです。コロナで企業も従業員も非常に疲弊しましたが、そこに追い打ちを掛けるように、コロナ収束後は、圧倒的な人手不足が襲ってくることが予想されます。ですので、現在雇用している従業員の流出(離職)を防ぎ、人手不足への対応を考えなければなりません。残業で補おうにも、法律により、時間外休日労働については上限規制がありますので、無制限に残業をさせることは出来ません。今のうちから対応を考えておかないと、せっかく来た仕事を断わらなければならないこともあり得ます。コロナの第6波も気になり、今はそこまで考えが回らないのもわかりますが、先を見据えた採用行動が必須となります。

◇雇用調整助成金と社会保険労務士について◇
 今回、社会保険労務士に助成金申請を依頼しようとしたが、顧問契約をしていないので、断られたという方もいらっしゃるかもしれません。なぜ、社会保険労務士が断る事例が多かったかというと、顧問先以外には手が回らなかったということもありますが、本当の理由は雇用調整助成金の申請書の中に、社会保険労務士等の代理人について、故意に不正受給に関与していた場合(偽りその他の不正の行為の指示やその事実を知りながら黙認していた場合を含む。)は、①申請事業主等が負担すべき一切の債務について、申請事業主と連帯し、請求があった場合、直ちに請求金を弁済すべき義務を負うこと、② 代理人等に係る事務所の名称、所在地、氏名及び不正の内容が公表されること、③不支給とした日または支給を取り消した日から起算して5年間は、助成金に係る代理人等が行う申請又は提出代行、事務代理に基づく申請ができないことについて承諾します。という記載があります。スポットの依頼の場合は、どうしても日々の信頼関係が築けていないので、この連帯保証人のような文言で、二の足を踏む形となりました。「不正行為又は不正を黙認していなければ、良いのでは?」とお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、やっていないことの証明は非常に難しいです。

 コロナ禍で、申請する事業主様の中には、従業員を働かせているのに助成金を申請して不正に手を染めてしまう方がいます。経営が厳しい中なので、非常に魔が差しやすい状況及び性質のある助成金を連帯保証人として申請する勇気のある社会保険労務士がどれだけ居るのかと思います。皆様にはご迷惑をお掛け致しましたが、このような理由が背後にはありました。今後、こういう状況の際でも、社会保険労務士会や各種公共団体等で出張相談や無料相談会を行っている場合がありますので、ご利用頂ければと思います。それでは、希望も込めて、一丸となってコロナに打ち勝ち、働きやすい職場環境を形成していきましょう。

〇 鈴木 道士 〇
鈴木道士行政書士・社会保険労務士事務所 代表
大学卒業後は都内の建設会社に入社し、都営地下鉄大江戸線の現場監督などを担当。その後、平成11年に社会保険労務士の資格を取得。資格予備校での講師業を経て平成18 年に独立開業。以後、人事・労務の専門家として、地域の企業・経営者の支援に取り組んでいる。