かわらばん

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かわらばん地域版78号 2022年5月

エピトマップ株式会社
   人獣共通感染症・疾患の One Health 創薬ベンチャー
 人獣共通の感染症や疾患を駆逐するワクチン、治療薬の開発に取り組むエピトマップ株式会社の増田健一社長にお話を伺いました。

 エピトマップ社は、理化学研究所「人工ワクチン研究チーム」のリーダーであり、動物アレルギー検査株式会社の代表も務める増田社長が令和2年7月に設立した会社で、SIC-2 Creation Lab.に入居しています。

 現在も世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。多くの研究者がワクチン開発に取り組んでいるものの、ウイルスの変異、抗体依存性感染増強(ADE:ウイルスの感染やワクチンの接種によって体内にできた抗体が、ウイルスの感染や症状をむしろ促進してしまう現象)、そして各種哺乳類への感染(「保菌動物」の拡大)などへの対応といった課題に直面しています。エピトマップ社では、理化学研究所と動物アレルギー検査が進めてきた共同研究の成果を事業化することにより、動物とヒトの種間を超えて適用可能で、かつ、将来の変異株に対応しADEを回避する「ユニバーサルコロナウイルスワクチン」の開発に取り組んでいます。また、ヒトと動物で根本的な対策が立てられていないアレルギーに対する「アレルギー根本治療薬」の製品化もヒトと動物の両方で目指しています。

 ユニバーサルコロナウイルスワクチン事業では、新型コロナウイルス感染症だけでなく、高病原性コロナウイルスによる猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)などすべてのコロナウイルスに有効な化学合成ワクチン(CoV-mMAP)の開発に取り組んでいます。その特長は、今後発生するすべての変異ウイルスに対応するだけでなく、従来のワクチン接種で付与された抗体が起こすADEを回避できる点にあります。CoV-mMAPでは、すべてのコロナウイルスにおいて変異しない共通部位を選定することで、将来的な変異ウイルスにも対応できるように設計されています。これまでに、発症すると100%致死のFIPVの感染モデル猫を生存させることに成功しており、今後は製薬メーカー等と協働し実用化を目指していきます。

 さらに、抗体医薬品事業として、「犬用アレルギー根治治療薬(E-mab)」の開発にも取り組んでいます。アレルギーは免疫グロブリンE(IgE)が患者体内で生じることで起こりますが、IgEの中にはアレルギー発症に無関係なタイプ(非病原性)も存在し、その根治治療を成功させるためにはそれを区別する必要がありました。開発した新規抗体は、犬とヒトでアレルギーを起こす病原性IgEと非病原性IgEを見分ける特徴を持っています。この抗体で病原性IgEだけをいったん消失させる抗体医薬を開発し、犬とヒト双方への効果適応を目指していきます。これは、アレルギー反応を根本的に消失させる初の治療薬になります。すでに、犬用抗体医薬の製品化については、製造・治験フェーズまで進んでおり、まずは犬用医薬品として、その後にヒトの医薬品へと展開する計画です。

 令和3年10月には、日本全薬工業株式会社と動物アレルギー検査を引受先とした第三者割当増資により、約3億円の資金調達を行いました。また、三者間で事業化推進契約も締結し、日本製初の動物用抗体医薬品(アレルギー治療薬)の製品化に向けて、開発を加速させていきます。

 エピトマップ社では、人と動物の両方を視野に入れた薬剤開発を行い、人獣共通感染症・疾患の“One Health 創薬ベンチャー”として、独自の発想と生物学のロジックを駆使して動物とヒトの医療発展に貢献していきます。

エピトマップ株式会社
SIC-2 Creation Lab. 2404号室
http://www.epitomap.co.jp/