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かわらばん地域版79号 2022年7月

研究開発に使える補助金(全3回)
   「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech)」の活用を考えてみませんか? <第1回>
 ここ数年、政府の中小企業政策として様々な補助金が公募されています。設備投資のための「ものづくり補助金」やIT投資促進のための「IT導入補助金」(いずれも経済産業省)は事業規模も大きく、活用されている事業者の方も多いのではないかと思います。ここでは少し視点を変えて「研究開発」を検討されている事業者様に、研究開発投資に活用できる補助事業をご紹介したいと思います。

 技術開発やサービス開発は会社の成長や競争力強化のために実施するものですが、開発投資(先行投資)は投資費用回収の可能性や時期が読めないため、中小企業、小規模事業者の中には「いいアイ
デア」や「優れた技術」があっても、開発着手をためらうケースがあります。このような事業者の開発投資を後押しするのが、国や自治体の補助事業ですが、設備投資やIT投資の補助金のように予算規模が大きくないため、意外に知られていません。

 身近なところでは相模原市が市内の事業者に対して助成を行う「相模原市中小企業研究開発補助金」(一般型、新型コロナウイルス関連型)があります。上限は一般型で100万円(補助率1/2)、コロナウイルス関連型で300万円(補助率3/4)と研究開発の初期段階に必要な費用を賄うことができます。

 さらに製品化まで視野に入れた研究開発では、数千万円以上の開発投資が必要になる場合があります。そこでご紹介したいのが、経済産業省の成長型中小企業等研究開発支援事業(通称:Go-Tech)です。Go-Tech は令和4年度から開始された事業ですが、その前身は戦略的基盤技術高度
化支援事業(通称:サポイン)と呼ばれ、ものづくりの「競争力強化」と「新事業創出」を目的としてこれまで2000件を超える研究開発事業を支援してきた実績があります。ものづくり補助金等の補助事業が補正予算で措置されるのに対して、Go-Tech は経済産業省の当初予算で編成され、中小企
業庁が公募を行うことから、政策的に非常に重要な事業に位置付けられていることがわかります。予算規模は毎年100億円から150億円、採択件数は100 ~ 120社程度と補助事業としては小ぶりですが、採択されたテーマは「選び抜かれた事業」として、産業界で高く評価されています。
補助事業の概要は次の通りです。

● 補助対象者:川下企業や市場のニーズを受けて、技術やサービスの高度化を行う中小企業者を含む共同体
● 補助金額:3年間で最大9,750万円(出資獲得枠の場合は3億円)
● 補助率:中小企業者は2/3 以内、共同  参画する大学や公設試は定額(ただし上限設定あり)
● 補助事業期間:2年度ないし3年度
● 公募期間:例年は2 ~3 月公募開始(4月末締切※) 

 Go-Tech 事業は一つ一つのテーマの開発規模が大きいため、求められる成果や申請要件が厳しく定められています。そのため準備に半年以上を要することも多いので、チャレンジしたい事業者の皆様は今から来年度に向けて準備していただくことをご提案します。次回以降では制度の詳細を2回にわたってご説明します。

※令和4年度は6月末に第二回公募が開始されました。締め切りは8月22日です。


〇 佐々木 浩子 〇
株式会社ポラリス 代表取締役
25年にわたり精密機械メーカに勤務し、主に技術開発・事業開発を担当。中小企業診断士登録後、2015年株式会社ポラリスを設立。企業の課題や悩みを整理し、技術、サービス、ノウハウなどをサポート。企業や経営者の想いを“可視化” することを理念に掲げている。
株式会社ポラリス         代表取締役 佐々木 浩子