かわらばん

かわらばん

    
かわらばん地域版80号 2022年9月

株式会社ワード技研
   「革新的3Dテクノロジーで新たなる挑戦!」
 自動車プレス鉄板部品の開発設計などを手掛ける株式会社ワード技研の代表取締役である川井聡社長を相模原市中央区清新の本社に訪ねました。

 川井聡社長は、昨年5月に創業者であり父である川井秀次氏(現:取締役会長)より事業を承継し代表取締役に就任した。同社は、昭和62年の創業以来、「企業は人なりを基本に、価値ある技術の創造」を企業理念に掲げ、①自動車プレス鉄板部品の開発設計、②プレス金型設計、③プレス金型のNC加工データ作成、④3Dリバースエンジニアリングの4つの事業を柱としている。そして、すべて三次元CADを使った設計を行っていることが同社のおおきな特徴と言える。中小企業の中では、かなり早い段階から三次元CADの導入を進めてきた結果、現在40台ほどの三次元CADを保有するとともに、技術的にもお客様の要望に応えられる体制(態勢)が構築されている。現在、日産自動車を中心にSUBARU、本田技研工業、トヨタ自動車グループ企業といった大手自動車メーカー及びティア1とされる大手部品メーカーと直取引しており、その技術力や対応力、そして数々の開発実績に裏付けさ
れた信頼が同社の一番の強みだ。

 自動車のプレス金型の設計からスタートした同社は、常に時代を先取りした新たな取り組みにチャレンジしてきた。平成21年には“自動車プレス成形シミュレーションの解析事業”を開始。業界では「サイマルテニアスエンジニアリング」といわれているもの。自動車のボディー部品は、一枚の鉄の板からプレスの金型で形状を成形していく。その一つの過程をすべて“バーチャル”で検証していこうというもので、コンピュータ上でシミュレーションしていく。従来、自動車メーカーは、実際に試作金型や生産用金型を作り、現物ができた時に初めて不具合などの検証を行ってきたが、毎回現物で検証していたら時間もお金もかかる。同社が得意とするサイマルは、金型を“バーチャル”で作り、デジタル上で品質不具合を検証し、現物を製作する前に修正し品質を向上していく技術だ。これにより金型の試作品の生産回数や現物での修正回数も削減でき、効率的に生産できる金型や生産工程の提案などを行っている。

 また、平成26年頃から「3Dリバースエンジニアリング」事業を開始した。ハイエンド非接触光学式の3D測定器(ATOS)を駆使して、様々な製品の複製及び製品の特長を考慮した3Dデータの作成を行う事業だ。部品ができたら測定して、3D設計データと照らし合わせて品質保証を担保しようというもの。自動車業界以外では、スポーツ用具・建築関係・エネルギー発電関連などからの引き合いも多くなってきているという。さらに「ベンチマーク」事業にも取り組んでいる。例えば、ガソリンからEV車への移行に伴い、各企業にて他社のEV車を調査する機会が増えている。今後、こうした需要にも積極的に応えていきたいと川井社長。

 そんな川井社長は相模原市南区桜台の生まれ。地元の小中学校を経て神奈川県立新磯高校へ進学した。中学・高校時代は自身の主張が強く、父である会長と将来に対して意見の食い違う時期があった。高校卒業後、大田区にある日本工学院専門学校CAD設計科で機械設計全般を学ぶ。その後、就職することも考えたが、とにかく自立したい、そして海外の知見を広めたいという思いからアメリカのシアトルへ留学。1年目は語学で挫折しそうになったが、2年目には見事短大のGreen River Community Collegeへ入学。その後4大のCentral Washington Universityへの編入も実現させ、通算5年間の留学生活を優秀な成績で卒業することができたそうだ。帰国後は三重県内の企業で1年間の修業を積んでから同社へ入社した。入社後、取引先に常駐し、厳しい上司のもと開発設計の業務に携わりながら多くの経験を積んだ。

 この1年間、会長から社長を引き継ぎ、無我夢中で取り組んできた川井社長は、「サイマルを中心とした自動車プレス金型設計事業を様々な分野に横展開したい。同時に3Dリバースエンジニアリング事業の拡大を視野に自動車業界以外からの受注も増加させる。さらに、今まで以上にネットワークを広げ、設計から製造まで一貫受注ができる体制を構築していきたい」。そして「その実現のために、社員との調和とチャレンジ精神を大事にしていきたい」と抱負を語る。たまの休日はお酒とアクティビティでリフレッシュ。ゴルフ、登山、キャンプなどのアウトドア派であり、最近では社員とサイクリングも楽しんでいるそうだ。ちなみに、「SIC経営塾」に参加した際、自社の現状をじっくり考え分析することができたことが、今の経営に役立っていますと川井社長。

 2代目社長として、先代が築いた経営基盤をさらに発展充実させていくために、新技術・新分野への「チャレンジする心」を大事にし、ワード技研だからこそ磨ける技術で革新を目指す川井社長の“新たなる挑戦” ははじまったばかりだ。

代表取締役社長:川井 聡(かわい さとし)
所 在 地:  神奈川県相模原市中央区清新8-18-9
従業員数:   336名
資 本 金:  1,000万円
事業内容:   自動車のサイマル、金型、NCデータ及び部品の設計、
        3Dリバースエンジニアリング
URL:https://word-g.com/
川井社長