デジタル技術とデータサイエンスを活用し、製造業の課題解決に取り組むDiNOV 株式会社の出島秀一社長にお話を伺いました。
令和3年(2021年)9月に創業した同社。当初はDesk10に入会しましたが、令和4年10月にSIC-1 Startup Lab.のスモールオフィスに移転。そして、令和5年3月には、開発環境のさらなる拡充が必要になったため、SIC-2 Creation Lab.のセミラボに移転するなど、着実に事業を成長させています。
長年にわたり、レーザーを用いた微細加工技術の研究開発等に携わってきた出島社長。
これまでに、国内外の研究機関で研究員を務めてきたほか、営業・マーケティング分野の業務にも従事するなど、多岐にわたる知見・経験を有しています。
同社の事業は、超微細レーザー加工などを手がけるデジタル・ファブ事業、データ通信システムのデジタル・コミュニケーション事業、そしてAIを用いたシステム開発のデータサイエンス事業が三本柱です。最近では、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「戦略的創造研究推進事業(CREST)」で採択された研究プロジェクトにも参画するなど、その技術力は高い評価を受けています。
そんな同社で新たに開発したのが、超微小液滴塗布ディスペンサー「フェムトスポッター(Femto-Spotter)」です。開発や製造の現場では、はんだペーストや接着剤などの液体を微小量だけ塗布することがあります。特に最近は、半導体や電子部品などの小型化・薄型化が進んでおり、液体制御分野でも超微細加工のニーズが高まっています。しかし、液体ごとに粘度や粒子の有無といった違いがあり、条件に合わせた液体制御が難しく、目詰まりなどのトラブルも少なくありません。そこで同社では、AI技術を活用し、これまでは難しいとされてきたフェムト(千兆分の一)単位で制御可能なディスペンサーを開発しました。これにより、塗布時のトラブル防止に加えて、加工精度や速度も大幅に向上しました。
本ディスペンサーは、はんだペーストや接着剤以外にも、導電性金属ナノインク、マイクロビーズ、光学樹脂、生体材料など幅広い液体に対応可能で、高価な液体でも最後の1滴まで使い切れる点も特長の一つです。また、チップマウンターへの搭載やレーザー加工機との統合といったカスタマイズにも柔軟に対応できます。
「バラツキ」「塗布量」「加工速度」など、顧客の要望を汲み取りながら、デモ機による実験を通して最適な提案・コンサルティングにつなげています。本技術は電子産業や医療・バイオ分野での活用も期待されるほか、大学・研究機関での導入も見据えています。また、最近は海外からの引き合いも増えてきており、早期のグローバル展開を計画しています。
「現場の困りごとに耳を傾け、今までにない技術で課題解決に貢献したい」と語る出島社長。DiNOVでは、デジタル技術とデータサイエンスの力で、ものづくりの可能性を広げていきます。
DiNOV株式会社
SIC-2 Creation Lab. 2701号室
https://www.dinov.jp/