かわらばん

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かわらばん地域版91号 2024年7月

中小企業のデジタルトランスフォーメーション
 労働力不足や原材料費など原価の高騰に悩む中小企業にとって、デジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上は、喫緊の課題となっています。今回を含めて3回の連載では、経済産業省の発表資料などを軸に、現在、中小企業支援機関においてDX推進に携わる筆者の経験を交え、DX の本質から利活用の具体策を紹介していきます。

【そもそもDXとは】
 多くの人がDXを、紙の書類をデジタルにすることや、手作業を情報システムに置き換えることだと考えがちですが、本当のDXはそれだけではありません。

 DXの真の目的は、会社をスピーディーで柔軟なものに変えることです。これにより、急な市場の変化にも素早く対応できるようになり、顧客にとって新しい価値を生み出すことができます。たとえば、インターネットを使って新しい顧客層にアプローチしたり、データを分析して顧客のニーズを先読みしたりすることが含まれます。

 重要なのは、「変革」です。単に新しいツールを導入するだけではなく、顧客により良いサービスを提供するために、会社の業務プロセスも見直すことを意味します。社員全員がこの変化を理解し、受け入れることが成功への鍵となります。

【DX に取り組んでいる中小企業はわずか15%弱】
 2023 年の中小機構の調査(注)によると、日本の中小企業の中でDX に本格的に取り組んでいるのは約15%未満という結果が出ています。これは、中小企業がDXの重要性を理解しつつも、実際にそれを推進する段階には、まだ多くの企業が至っていないことを示しています。
この調査からは、中小企業がDX に取り組むに当たっての課題も明らかになりました。課題の上位は、「ITに関わる人材が足りない」が28.1%で、前回調査からは3.2ポイント増加しています。次いで「DX推進に関わる人材が足りない」が 27.2%、「予算の確保が難しい」が 24.9%という順になっています。

 これらのデータから、中小企業にとって、ITの専門知識の不足や、初期投資のための資金調達が困難であることが、DX の障壁となっていることが推測できます。

【安価なクラウドサービスや生成AI などの出現で見えた解決の方向性】
 最近のテクノロジーの進歩は、中小企業に大きな希望を与えています。特にクラウドサービスや生成AIの普及は、これまでの大きな障壁であったコストと専門知識の問題を大幅に軽減しています。

 クラウドサービスを利用することで、企業は重い初期投資をせずに済みます。また、生成AIは、従来は専門の技術者を必要とした作業を自動化し、より効率的にすることで、中小企業の人手不足を補い、競争力を維持する手助けをします。

 次回以降で、これらテクノロジーを活用しつつ、中小企業の特性を活かしながら、DXを推進するための具体的な方法を探っていきます。

〇 小川 直樹 〇 
一般社団法人首都圏産業活性化協会 デジタルビジネスプロデューサー
小川経営研究所 代表 
中小企業診断士、ITコーディネータ

大手電機メーカーにて、研究開発、システムエンジニア、営業マーケティングを経て独立。中小企業診断士として現場に定着するまでの継続支援をモットーに、営業力向上の仕組みづくり、IT導入による業務改善、Web活用による集客力アップの提案を行っている。
一般社団法人地域マーケティング推進協議会理事、平成29年度中小企業経営診断シンポジウム第三分科会最優秀賞受賞。
一般社団法人首都圏産業活性化協会 デジタルビジネスプロデューサー  小川 直樹 氏
図表.DX に取り組むに当たっての課題 (n=1,000 複数回答)