かわらばん

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かわらばん地域版92号 2024年9月

株式会社A I R W O L F
   “ドローンが当たり前に飛んでいる相模原へ”
 ドローンスクールの運営やドローンによる建築調査のDX化事業などを展開する株式会社AIRWOLF(エアウルフ)の代表取締役である松下龍太社長を相模原市緑区寸沢嵐にある“相模原ドローンステーション”専用フィールドに訪ねました。

 自称“25歳まで自分はクズ男でした(笑)“と明るく話す松下龍太社長。父親の仕事の関係で東京都三鷹市から相模原市へ移ってきたのは5歳の時。市内の小中高校に通いつつ少林寺や空手に熱中したそうだ。高校卒業後はアルバイトを転々とする生活を送る。そんな松下社長の転機は25歳の時。知り合いの経営者から“うちの下請けとして電子部品のはんだ付けをやらないか”と話を持ちかけられた。即決すると直ぐに株式会社FORTを設立。ほぼ同時期に知人の紹介で相模原商工会議所青年部(YEG)に入会する。起業して5年が経った30歳の時、病気で倒れた父親が営んでいた業務用精米機販売事業と社員を譲り受けることになったが、社員10人のうち9人が辞めてしまうアクシデントに見舞われる。そのときばかりは、心底、会社経営や人との関わり方などを勉強しなければと思い一念発起したそうだ。事業を進めていく中で松下社長は、精米機を販売するにはお米を販売する人の気持ちを知ろうと米販売を、さらにお米を作る人の気持ちを知ろうと自ら「新規就農者登録」を行い米の生産に着手。農業に対するひたむきさが奏功し、関東一円から全国に販路を広げるまでになった。一方、農業はがむしゃらにやっていても儲からないし体力的にも疲弊していくばかり。また気候や育成状況に自分を合わせていくスケジューリングも至難の業だ。農業をはじめてから5~6年が経過し、もうやめてしまおうかと思ったその時、“ドローンが農薬散布”するニュースを見て“これだ”と思ったという。すぐにドローン操縦免許を取得するため、当時ドローンスクールに関わっていた岡山県青年部(YEG)の知人のもとへ飛ぶ。その際、JMA(一般社団法人日本マルチコプター協会)より関東・神奈川県エリアではドローンスクールが少ないので、その運営をやってほしいと松下社長に白羽の矢が立った。それが“AIRWOLF”立ち上げのきっかけだ。

 令和2年4月創立の同社は、①ドローンスクール事業 ②空撮事業 ③調査点検事業を事業の柱としている。ドローンスクールでは松下社長をはじめ6名のインストラクターが、国家資格取得に向けて学科と実技を親切丁寧に指導してくれる。特に卒業して終わりではなく、充実したアフターフォローが特徴だ。実際にドローンを飛ばす段階で発生する様々な疑問や実技訓練に無償で応じてくれるのがうれしい。そんなアットホームな環境に卒業生たちも自然に集まり、事例を用いて一緒に学び合うコミュニティーも出来上がっているのだとか。また普及活動の一環として、警察・消防や小学校5~6年生を対象にしたドローンスクールをボランティアで行っている。調査点検事業では、特に建築(測量点検)分野のDX化を中心に事業展開する。例えば、屋根の点検は通常2人1組で1~2時間はかかるところ、ドローンを使えば10~15分で完了し作業員の安全性も確保される。特にドローンの活用によりGPSを使って3軸の座標をとり空間位置のデータを記憶させるとともに4K(解像度)の画像データを重ねることで精度の高い測量と3D化が可能となる。農業分野においても一連の農作業を人の“カン”に頼るのではなく、蓄積されたデータから正確に種まきをし、農薬散布時期や刈取時期までを効率的に行えるよう実証実験が進んでいる。ドローンを使ったDX化で若者や経験の少ない人でも農業に参入しやすくなりそうだ。まさに企業がビジネス環境の変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に、業務そのものや組織、プロセスなどを変革し、競争上の優位性を確立する時代だ。松下社長は、人も社会も“環境”によって良くも悪くもなる。ドローンはまだまだ近未来的な“モノ”であるという見方が強い。自社事業を通じて、ほとんどの人がカレーライスの味を知っているように“ドローンの可能性”を知ってもらい、ここ相模原が“ドローンが当たり前に飛んでいる街”にしたいと語る。

 新たな産業で住み続けられる街づくりを目指す同社は、令和3年に相模原市と「災害協定」を締結した。「災害時には連携がないと二次災害が起こる可能性がある。特に現場最前線では災害救援活動に精通した人がドローンを操縦したほうが多くの人の命を守ることが出来る。私たちの出番は、その後の状況把握が必要になった時。様々な分野のプロたちがドローンを操縦できる環境になればより良い社会になると思います。」と松下社長。令和4年には、全国初となる「相模原市における空家等対策に関する協定」を締結。令和6年からは市内の一部の農家の農薬散布を請け負うことになった。持ち前のバイタリティーと行動力で、これまで以上にドローン普及活動をパワーアップし “ドローンが当たり前に飛んでいる相模原”の実現を目指す松下社長に熱いエールを贈ります!

代表取締役: 松下 龍太(まつした りゅうた)
所在地:   神奈川県相模原市南区磯部1176
従業員数:  12 名
事業内容:  ドローンスクール事業、空撮事業、検査点検、
       農業関連事業
URL: https://drone.seimaiki-fort.com/
松下社長