かわらばん

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かわらばん地域版94号 2025年1月

株式会社相模運輸
   「物流の最適化に向けて」
 今日、“モノ”が遅れず確実に届くということが「あたりまえ」になっています。当日配送のサービスをはじめ、これだけ時間通り正確にモノが届くのは日本だけでしょう。これは、輸送事業者並びに従事者の弛まぬ努力のおかげにほかなりません。特に国内貨物輸送量(トンベース)の9割を占めるトラック輸送は、日本の物流の主役として国民生活や経済を支えています。“モノが回らないと、経済が回らない”と言われるように、社会にとって必要不可欠な事業を長きにわたり続けてきているのが株式会社相模運輸です。

 同社は、一般貨物自動車運送事業者として、昭和35年に吉田修一社長の父である幸一氏によって創業され、今年で創立65年目を迎えます。現在、相模原を中心に各地へオーダー輸送を行っており、主な輸送品目は精密機械、機械部品、食品、引っ越し貨物など多岐にわたります。吉田社長は、大学卒業後、立川に本社がある多摩運送株式会社で6年間の勤務経験を経て同社に入社、平成12年に代表取締役に就任しました。トラック運送業は、典型的な労働集約型産業であることから効率化が難しく、法規制などの外的要因に影響を受けやすいため、経営の安定性を保つために事業の多角化に取り組んできたそうです。時代の変遷とともに貸倉庫業・貸事務所・貸店舗部門、損害保険代理店、引っ越し部門及びトランクルーム部門開設、さらには産業廃棄物収集運搬部門から特定信書便事業などの新事業を適時開設。不動産投資にも力を入れてきたことが安定した事業の継続につながったのではないかと吉田社長。

 そんな吉田社長は、生まれも育ちも相模原。清新小学校から清新中学校を経て、神奈川県立相模原高校へ進学。中高時代は、ミュンヘンオリンピックで金メダルを獲得した大古選手や森田選手に憧れてバレーボール部で汗を流す。その後、成蹊大学経済学部経営学科へ進学、アメリカに憧れてアメリカンフットボール部に入部。練習では格闘技さながらのハードなタックルで生傷や怪我が絶えず、年齢を重ねるごとに古傷が痛むこともあるのだとか。それでも、今振り返るとコンタクトのあるスポーツは常に真剣勝負で面白かったそうです。吉田社長が相模運輸に入社当したのは昭和63年。当時は昭和バブルの真っただ中、多くのドライバーは給料の高い建設業界へ流れてしまうため、深刻なドライバー不足になったそうです。そのような状況から、吉田社長はドライバーとして大阪や九州など日本全国を休みなく走り抜ける日々が続きます。とてもきつかったそうですが、自社の仕事だから無理もできたのだといいます。趣味はプロ級の腕前をもつゴルフとアユ釣りです。もともとは海釣りからはじまり、マリアナ海溝や八丈島で磯マグロやかんぱちなどの大物を釣っていました。現在では相模川や道志川でアユ釣りを楽しんでいるとのこと。ちなみに、おすすめポイントは岐阜県の郡上八幡だそうです。

 長年にわたる運輸業界での経験と人脈を持つ吉田社長は、平成28年から一般社団法人神奈川県トラック協会の会長に就任され、トラック業界の発展と2024 年問題などの課題解決に取り組んでいます。2024年問題とは、昨年4月からトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、「物流の停滞」「物流コストの増加」「運送会社の収益減少」「ドライバーの収入減少」などの問題のことをいいます。神奈川県内の貨物自動車運送業者は約3千社(全国に約6万社)が存在し、とても重要な問題となっています。こうした問題を解決していくためは、予約システムの導入による荷待ち時間や待機時間の削減、業務効率化、長距離輸送や配送オーダーのリードタイム延長など、荷主とトラック事業者が連携して取り組んでいくことが必要です。また、荷主へはドライバーの労働環境改善などに取り組むための適正な運賃の設定や燃料サーチャージ、付帯作業料金、高速道路利用料などの収受への理解が重要なポイントとなります。さらに消費者の方々には、再配達を減らす工夫やまとめ買いによる運送回数の削減と適正価格への引き上げに対する理解が必要となります。しかしながら、なかなか消費者に理解を得るまでに至っていないのが現実だそうです。これまで、国土交通省や関連省庁も動いているが、人件費の上昇や燃料費の高騰があっても価格転嫁はすんなり出来ず、荷待ち・待機時間や再配達も無料が“あたりまえ” になっています。吉田社長は、この“あたりまえ” を消費者の方々に見直して頂き、変化を受け入れていただけるよう、これからも「物流の最適化」に向けて意識改革を進めていきたいと話します。

 トラック輸送は国民の安全や生活、そして経済を支える重要なインフラであり、ライフラインであるといえます。今後、労働人口が減少し、さらなる労働時間の短縮要請が見込まれる中、これまで通り“あたりまえ” にモノが届くことを止めないためには、トラック事業者と荷主、そして消費者が、より理解を深かめていくことが大切といえるでしょう。引き続き、「物流の最適化」に向けて取り組む吉田修一社長とトラック輸送事業に従事する多くの方々に心からエールを贈ります。

団体役職
・一般社団法人神奈川県トラック協会会長(平成28年6月~)
・公益社団法人全日本トラック協会副会長(令和3年7月~)
・神奈川県自動車交通共済協同組合副理事長(平成20年5月~)
・陸上貨物運送事業労働災害防止協会神奈川支部長(平成28年5月~)
・一般社団法人神奈川自動車会議所会長(平成28年5月~)
・社会福祉法人すすきの保育園評議委員を歴任(令和2年5月~)
※㈱さがみはら産業創造センター取締役(平成14年~平成31年)

代表取締役: 吉田 修一(よしだ しゅういち)
所在地:   神奈川県相模原市中央区千代田2-1-8
従業員数:  15 名
事業内容:  運送業
吉田社長